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梅雨に食べたいイタリアン 薬膳生かし豆のパスタ料理

イタリア美味の裏側(4)

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NIKKEI STYLE

今年は梅雨入りが例年になく早まっている。梅雨には体が重だるくなって食欲が落ちたり、おなかをこわしたりと不調になりがち。食事が医術と同じように体を整えるという「医食同源」の考え方は、実はイタリア料理にもある。中世の医学校がまとめた「サレルノ養生訓」が、とくに南イタリア料理に生かされているからだ。

地中海世界で初めて医食同源をとなえた医師ヒポクラテスは、「季節の変化や環境が健康に影響する」とみなした。イタリアに比べて多湿な日本では、梅雨の湿気が体に入りこみ、健康に影響すると考えられる。

日本でイタリア料理を食べて体調を整えたいと思うとき、国際薬膳師という資格をもつわたしは、薬膳の知恵を使うことをおすすめしている。中国の伝統医学にもとづく薬膳は、医学や栄養学による根拠に欠けるといわれるが、何千年という経験を積みかさねてきた実績がある。

体の中の水分を外に出すと薬膳で考えられ、梅雨にぴったりの料理が、白インゲン豆のパスタだ。イタリア料理で豆はよく使われる。ヒヨコ豆、レンズ豆、白インゲン豆、斑(ふ)入りインゲン豆、赤インゲン豆、空豆、グリーンピースなど。なかでも、「気」を補い、体内の湿気をとり、胃腸の調子を整えるといわれる白インゲン豆のパスタを詳しくご紹介しよう。気というのはイタリアにはない考え方だが、生命のエネルギーと考えればいいだろう。

「パスタ・エ・ファジョーリ(パスタとインゲン豆)」という料理は、ほぼイタリア中にある。地方によって使うパスタや豆はちがうが、北部をはじめ全土で使うのは斑入りインゲン豆「ボルロッティ」、トスカーナほか中部で主に使うのが白インゲン豆「カンネッリーニ」だ。

おうち料理は白インゲン豆の水煮パックでかんたん

はじめにご紹介するのは、ミスタ・コルタ(数種類のショートパスタのミックス)とインゲン豆の料理。主に南部やシチリアで食べられる。パスタとインゲン豆の料理は煮くずれた豆でとろみがついて冷めにくいことから、寒い季節に食べられることが多い。だが、シチリアでは、収穫期である春から夏、サヤからむきたてのボルロッティでつくり、それ以外の季節はゆでて冷凍した豆や乾燥豆をもどして使う。

料理店「シチリア屋」(東京・文京)では、白インゲン豆を使ったミスタ・コルタをときどきメニューに出している。イタリア料理店数軒を展開するサローネ・グループの店で働いたあと、シチリア島北東部で修業中に島を自転車で一周したシェフ兼店主の大下竜一さんは言う。

「うちでは、シチリアでやるように豚の皮を入れて煮ています。ショートパスタはアルデンテにこだわらず、原料の小麦のおいしさを引き出すところまでゆでます。ときにはゆですぎのものがあっても、さまざまなパスタの固さのちがいを楽しむのがこの料理の魅力です」

家庭でつくるには、白インゲン豆の水煮パックを使えば、かんたんにできる。香味野菜(玉ネギとニンジン、セロリ)のみじん切りをオリーブオイルで炒め、水と塩を加えて豆ごと煮こみ、さらに水と塩適量を足し、そこにミスタ・コルタを入れて煮るだけ。昔は豆がくずれるまでコトコトと煮こんだが、家庭では、煮えた豆の半量をブレンダーにかけて混ぜこみ、とろみをつける。

穴あきショートパスタと白インゲン豆の料理も、南イタリアでよく食べられる。わたしも取材のため、鉄子でもないのに在来線に7時間も乗って疲れはて、このひと皿で活力をとり戻した覚えがある。

この料理もほぼ同じつくり方で、パスタを最後に加えてゆでれば完成。この1センチほどのショートパスタは日本では手に入りにくいので、スパゲティをポキポキと2~3センチに手で折って入れるといい。

小売りされており、トレーサビリティがしっかりしたパスタと白インゲン豆のなかから二つ、挙げておこう。

南イタリアのパスタメーカー、ディ・マルティーノはミスタ・コルタもつくっており、1900年代初期の創業。プーリア州ほか南部の契約農家のデュラム小麦を使っている。パスタづくりで500年の歴史ある地グラニャーノで、同地の水を使ってつくられる。ブロンズダイス(青銅製の型)で成形することでパスタの表面にざらつきが生まれ、ソースがからみやすい。小麦の風味を落とさないためには低温長時間による乾燥が大切だが、パスタの太さと形により40~85℃で4~60時間と季節に応じて変えている。

この製品についてディ・マルティーノは明かす。「多種類のパスタの余りを集めて、インゲン豆あるいはジャガイモといっしょに煮るのが昔の家族の習慣でした。この習慣を守りたいと思って開発したのが、ミスタ・コルタなのです」

香味野菜のみじん切りが面倒なときは、「ソル・レオーネビオ オーガニック白いんげん豆」の瓶詰めを使うと便利だ。この白インゲン豆は、北イタリアの有機畑で育てられ、枝つきのまま天日干しして完全乾燥されたもの。有機栽培された香味野菜のブロード(だし汁)で豆を煮て、スープごと瓶詰めされている。瓶の中身と2.5~3カップの水と適量の塩を鍋に入れ、熱してパスタを加えてゆでればできあがり。気を巡らせるといわれる玉ネギだけでもざく切りにし、パンチェッタ(塩漬け豚肉)を少し加えれば、さらに風味豊かになる。

コロナ禍で運動量が落ちている場合は、パスタを控えめに

「貧者の肉」といわれる豆は、たんぱく質や食物繊維が豊富。パスタと豆の料理は腹持ちがよく安価なので、庶民や貧しい人、労働者を中心に愛されてきた。白インゲン豆もパスタも炭水化物が多めなので、コロナ禍により運動量が落ちている方は、パスタを控えめにするといい。

最後に、グリーンピースを使ったパスタもご紹介しよう。薬膳ではグリーンピースは気を巡らせ、体内の湿気をとり除くとされる。みじん切りの玉ネギとパンチェッタをオリーブオイルで炒め、グリーンピースとブロードを加え、ゆでたパスタとあえるだけ。グリーンピースは冷凍でも缶詰でもよい。ヴェネツィア近辺はパスタよりも米、南部では穴あきショートパスタ、ヴェローナでは幅広パスタを使うのが伝統的だ。

蒸し暑いかと思うと冷えこむことも多い梅雨どき。豆のパスタ料理で気を補ったり巡らせたりして、重苦しく感じる季節をどうか乗りきっていただきたい。

(イタリア食文化文筆・翻訳家 中村浩子)

中村 浩子
イタリア食文化文筆・翻訳家。東京外国語大学イタリア語学科卒。イタリアの新聞社『ラ・レプブリカ』極東支局長助手をへて、文筆・翻訳へ。著書に『イタリア薬膳ごはん』(共著)『「イタリア郷土料理」美味紀行』、訳書に『イタリア料理大全 厨房の学とよい食の術』(共訳)『スローフード・バイブル』。

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