カフ・リンクスの本式は「両前ボタン」でカフ・リンクスの上も下も同じく装飾プレートになっているスタイルのこと。さすがにチャールズ皇太子は、いつも「両面式」のカフ・リンクスを使っています。本式のカフ・リンクスを通すためには、袖口のボタン穴がやや大きくなくてはなりません。これが本式のシャツのあるべき姿なのです。

熱帯雨林の保護 サファリジャケットで立ち向かう

チャールズ皇太子が好んだ「アンダーソン&シェパード」の魅力は、仕立ての「柔らかさ」にあります。モダンな仕立てで、やや軽くて柔らかい。古典と現代がうまくミックスされて、今の時代にもフィットするスーツなのです。

さて、そのチャールズ皇太子が時にはサファリジャケットをお召しになると聞くと、意外に思われるでしょうか。これは今、チャールズ皇太子の関心事である「熱帯雨林」と大いに関係があります。

「即位礼正殿の儀」に参列した英国のチャールズ皇太子(2019年、皇居・宮殿「春秋の間」)

年々、熱帯雨林が開発の名のもとに破壊されています。今日の異常気象の遠因ともいわれています。チャールズ皇太子は英国民を代表して熱帯雨林の保存に立ちあがり、基金の設立、講演会の開催と積極的に動いています。実際、海外の現場にも足を運んでいます。そのときの服装がサファリジャケットなのです。

「サファリ」は富豪のお遊びである「狩猟旅行」のための服装として1920年代に生まれました。大きなパッチ・ポケットと、肩には肩章が付きます。生地はコットンツイルで、藪(やぶ)に絡みつかない工夫がなされているのです。そのサファリジャケットも、今日のチャールズ皇太子の意志に沿うのであれば「熱帯雨林保存運動」の賛成者の制服ということにもなるでしょう。服は心の表れ。いっそ、グリーンのサファリジャケットを熱帯雨林保存の象徴にしてはどうでしょうか。

出石尚三
服飾評論家。1944年高松市生まれ。19歳の時に業界紙編集長と出会ったことをきっかけに服飾評論家の元で働き、ファッション記事を書き始める。23歳で独立。著書に「完本ブルー・ジーンズ」(新潮社)「ロレックスの秘密」(講談社)「男はなぜネクタイを結ぶのか」(新潮社)「フィリップ・マーロウのダンディズム」(集英社)などがある。

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