クラシックな4つボタンの場合、袖口から数えて3つのボタンを本開きにして、4つめのボタンは開き見せにするのです。腕の長い息子に上着を譲ったときには、袖を出したうえにボタンホールをひとつ新たに設け、そこに袖口から4つめのボタンを外して移せばよろしい。そうすれば4つボタンのまま、すべて本開きという仕様になります。もし最初からすべて本開きにしておくと、袖を出したとき、5つめのボタンホールまで設けねばならなくなります。つまり4つボタンの上着が5つボタンに変わってしまうのです。

スーツはシングル チョッキはダブル
こうした業界の工夫を活用しながら、チャールズ皇太子は「良い服を長く着る」、いわば装いのサステナブルを実践してきたのです。そして同様の服装哲学は、チャールズ皇太子に限らず、英国の上流階級に根強く引き継がれてきたものなのです。
ところで普段、チャールズ皇太子はどのような装いをしているのでしょうか。日本の皇室も同じですが、「国産品愛用」が無言の約束になっています。チャールズ皇太子の着る服は、間接的に英国産業の宣伝にもつながるので、いい加減な服装はできません。
普段はシングル前の、3つボタン型のスリーピース・スーツを着ることが多いようです。色はダーク・グレーの無地。無難な選択でありましょう。私たちのビジネス・スーツにも通じますよね。

チョッキは、ダブル前であることが多い。片前の上着に、両前のチョッキというわけです。これにも理由があります。シングルの上着にシングルのチョッキなら、前ボタン同士が重なってしまうからです。ダブルとシングルであれば、前ボタン同士が干渉しません。
チャールズ皇太子の着こなしについてなるほどと思うのは、常にダブル・カフのシャツであることです。ダブル・カフのシャツは指示を与える立場にふさわしいもの。一方、指示を与えられる立場にふさわしいのが、シングル・カフのシャツなのです。ダブル・カフは、カフ・リンクスで留める形式の袖口。「下着用」である貝ボタンは見せませんよ、という意味であります。

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