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エンタウオッチング

2021/5/21

エンタウオッチング

タレント志望者以外も

芸能事務所が相次いで高校に進出した背景には、生徒の進路の多様化がある。

「いまや通信制高校は全日制高校に順応できない人の選択肢ではない」と坂本氏は指摘する。ネットを通じて豊富な社会についての情報を得られるようになり、「若い時点から自分の好きなスタイルで学びたいと思う人が増えている」(坂本氏)。

吉本興業でアカデミー事業を担当する坂内光夫氏も「若いうちからSNSで情報発信できる環境が整い、自立年齢が下がっている」と話す。とはいえ、両校が想定するのは目的意識がはっきりした生徒ばかりではない。漠然と「何かやってみたい」と考える生徒も募集対象だ。

ワタナベNオンラインハイスクールは「魅力発見プログラム」というカリキュラムを用意した。著名演出家の金谷かほり氏が監修するこのカリキュラムでは、生徒が自分の魅力を知り、どう表現するかを学ぶ。演出家に監修を依頼したのは、出演者の魅力を見極め、引き出すことにたけているからだ。自分の長所を効果的に表現するスキルはどんな進路でも武器になる。

吉本興業高等学院も、コミュニケーション能力に重点を置く。「クリエーティブな発信のベースにはコミュニケーション能力がある。そこをしっかり身につけてもらう」と坂内氏。「芸人」、「パフォーマー」に加え、インフルエンサーやプロデューサーについて学ぶ「デジタル」、映像ディレクターや脚本家、マネジャーなどの「クリエイティブ」と、幅広いカリキュラムを用意し、裏方としてエンターテインメントを支える人材の育成も目指す。

業界の間口も広がっている。「かつて芸能界は、スカウトかオーディションしか入り口がなかった。今は学んで(芸能界に)入る道が開かれている」(坂本氏)

芸能人やインフルエンサーも、今後は「学んで目指す職業」になるのかもしれない。

(ライター 出雲井亨)

[日経エンタテインメント! 2021年5月号より再構成]

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