人材配置、「専門性」と「強み」は違う

――人材育成ではどんなことを心がけてきましたか。

「一人一人の強みを生かした人材配置をすることです。人事ではその人が過去に担当してきた地域や仕事の領域を見て、『こういう専門性があるから次も同じような部署に』となりがちです。でも、専門性と強みは違います」

「例えば、米国市場を担当してうまくやってきたから、その人は米国に専門性があると見るのではなく、私はその人の本当の強みはどこにあるのかに目を向けます。数字を理解する力かもしれないし、人を動かす力かもしれない。だとすれば、その強みを生かし、なおかつ仕事の幅を広げられる場として、次はアジアなど別の地域を任せてみようかなと考える。人事にもクリエーティビティー(創造性)が必要です。当人にとって意外な人事になるかもしれませんが、『あなたにはこんな強みがあるんだから絶対大丈夫。できます』と必ず声をかけることにしています」

――リーダーの条件とは何でしょう。

「持っていた方がいいなと思うことを2つ挙げたいと思います。1つ目は『勇気』。決断力と似ていますが、もっとエモーショナル(感情的)な意味を込めて、勇気と言っています。リーダーとして最後に決断するとき、それが自分自身や組織にとってつらいものになることが結構ありますが、そういうときこそ、自分を奮い立たせる勇気が必要です」

リーダーの条件に「勇気」と「共感能力」を挙げる

「将棋の羽生善治さんが本で、自身の過去の決断を振り返り、『うまくいくかではなく、うまくいかなくても納得がいくかで考える』という意味のことを書いていました。それを読んだとき、私が考えている勇気とつながる話だなと思いました。つまり、決断に至るプロセスに恥じるところがないかを自分に問いかけ、『自分は納得するまで考え抜いた』という自信が持てれば、勇気が湧いてくるのではないかと思います」

「人間は弱いので、決断する際にどうしても他人の評価や、失敗したらどうしようという結果に対する恐怖心が先に立ってしまいます。経営者であれば、記者会見で自分が頭を下げている絵が思い浮かんできてしまったりするのです。でも、その恐怖に打ち勝ち、自分の筋立てに納得し、覚悟を持つこと。それが私の考える勇気です」

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