「2人目」育てたい 家計が心配で諦めなくていい理由
多くの家計相談を受けていると、時々「2人目を産んでも大丈夫でしょうか?」と聞かれることがあります。正直、私などに決められることでは到底ないのですが、どうやら子育てにかかる費用が、子どもを産むかどうかの不安材料になっているようです。
ちゅうちょする理由は子育てにかかるお金
子ども1人を21歳まで育てるためにかかる費用は、約1300万円。少し古いデータですが、2005年に内閣府が出した「国民生活白書」に記された金額です。今では物価や教育費も値上がりしているので、もう少し金額が増えているのではないかと思いますが、様々な記事にも使われているデータなので、意識されているご夫婦は多いようです。
この金額をもう1人分負担して暮らしていけるのだろうか。これが2人目をちゅうちょする原因の1つになっています。共働きでなんとか金銭面を維持しているので子育てで働けなくなったら困るという場合もあるでしょうし、産休や育休をもう1度取ると職場に復帰できなくなるのではないか、体力的に大丈夫だろうかというような不安もあるでしょう。しかし、やはり金銭的な問題が一番大きいと、家計相談を通して感じています。
ですが、子どもは大人に気付きや癒やしを与えてくれ、共に成長できる仲間でもあると思います。「2人目が欲しい」という気持ちがあるのに、金銭的理由だけであきらめてしまうのは、少しもったいなく思ってしまいます。
私には6人の子がおり、3人目までが成人しています。これまでの子育てを振り返ると、生活費は1人増えるごとに増えましたが、6人いるからといって6倍になるわけではありませんでした。幼稚園や保育園の費用、高校の授業料、大学の費用などの学校教育費は割引や節約法がなかったので、末の子が進学するときには「6倍になった!」となってしまうのかもしれません。けれども、それ以外の生活費は、意外と倍々で増えるものではないのです。
前述の「国民生活白書」の調査では、2人目を育てるには約2割減って1050万円ほど、3人目ではさらに3割近く減り、770万円ほどとなっています。子どもの増加に伴い、1人にかかる費用は逓減しているということです。
不安がるより「何とかできる!」という思い込みも大事
子ども1人育てるのにかかる1300万円は、当然のことながら、子どもを産む前に用意しておかなくてはいけないものではありません。毎月の収入で生活するなかで、長期にわたって支払った合計額の平均が1300万円ということです。
時には教育費として、入学金や授業料などのまとまった資金が必要になるでしょうが、頻度は多くありません。これらは毎月の給与からやりくりするには厳しい金額かもしれませんが、1300万円に比べるとだいぶ少ない金額です。ですから、子育てにかかるお金は「どうにかできるかしら」ではなく、「何とかできる」「何とかする」と思い込んでもよいとも思うのです。生活をしながら、まとまった教育費を準備するためにお金をためることもできるはずです。もちろん、前提に家計管理は必要になりますが、無理難題と諦めるのは早計です。
子育てを支援するために「児童手当」があり、条件はありますが幼児教育・保育や高等教育の無償化も進んでいます。なんだかんだいっても、子育てがしやすいよう、様々なサポートが用意されています。それらを上手に使っていきましょう。一方で気になるのは、「教育無償化や児童手当で浮いた分を、塾などに使えるわ」という意見を現場で聞くことが多いこと。そんな風に考えるのは、子どもの教育にお金をかけすぎることにつながりかねず、のんきではないかと感じます。そうならないようにしたいものです。
話を戻します。子どもを育てていると、子どもが「教育を受ける場」について考える時期もあります。つまり、小学校、中学校、高校、大学に進学するときに私立にするか、公立にするかなど、学業のレベルや学校環境により選択したくなるのです。そういう場面に当たったとき、「何が何でも希望を優先したい」と突き進んでしまうと、失敗します。自分たちの希望と、家計や資産状況、受けられるサポートなどと照らし合わせ、どういう選択が可能なのかを子どもを交えて考えましょう。お金がかかるのは一時とはいえ、将来の資金計画に影響を及ぼしてしまってはいけません。きちんと計画をしていけば、子どもが2人以上いても困窮した家庭にはならないのです。
子育ての環境は改善している
子育てには確かにお金がかかります。これは昔からそうです。今では共働きが当たり前になってきていますから、金銭的に見ると昔より有利になっているかもしれません。そして、幼児教育・保育、高等教育が無償化され、実は昔より子育てするお金については困らなくなったのではないかなとも思います。
また、昨今のテレワークの増加などから、働きながら子どもと過ごす時間が増えたという人も多くいます。これが当たり前になってくると、より仕事と子育ての両立も考えやすくなるでしょう。そして副業も認められる時代です。収入の在り方も変化しています。
つまり、子育て費用を何とかできる可能性は、以前より高くなっているのではないかと思えるのです。あまり言うと無責任だと言われるかもしれませんが、何とかできる状況に、徐々に改善されているのです。それでも「教育費が心配」などという不安があるのなら、心配すべきは、子どもに期待し、成績や環境は良いが学費の高い学校に通わせたいと考える親の「欲」や「見え」かもしれません。これも悪いことではないのですが、家計状況に見合った育て方をするということが大切なのではないでしょうか。
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表。お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、これまでの相談件数は2万3000件を突破。著書に『はじめての人のための3000円投資生活』『年収200万円からの貯金生活宣言』など。オンラインサロン「横山光昭のFPコンサル研究所」を主宰。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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