素朴な疑問から考える世界や日本の課題
「二酸化炭素をいちばん出さない乗り物はどれ?」「社員を不当に働かせる会社を何という?」「水道水をそのまま飲める国は世界で何カ国?」――世界が抱える課題はこうしたクイズ形式の素朴な疑問にまとめられ、そこから日本が抱えている課題、世界の課題と自分とのつながり、自分ができることは何かまで、考えさせる編集になっている。
4月末の本欄「『サクッとわかる』ヒット連発 地政学に行動経済学も」の記事でも触れたように、本格的な監修者とわかりやすいビジュアル重視の編集を組み合わせたビジネス教養書が相次いでヒットしている。児童書でも『こども六法』のような硬派なテーマのヒットもあった。本書もその流れをくむ。企業や組織がSDGsを自分のこととして考え、活用するには「親子で学ぶ」といった姿勢が必要なのかもしれない。
実務専門書が上位に
それでは、先週のランキングを見ていこう。
(1)株式会社法〔第8版〕 | 江頭憲治郎著(有斐閣) |
(2)2030年 すべてが「加速」する世界に備えよ | P・ディアマンディス、S・コトラー著(ニューズピックス) |
(3)会計監査六法 2021年版 | 日本公認会計士協会・企業会計基準委員会共編(日本公認会計士協会出版局) |
(4)大人も知らない!? SDGsなぜなにクイズ図鑑 | 笹谷秀光監修(宝島社) |
(5)両利きの経営 | C・A・オライリー、M・L・タッシュマン著(東洋経済新報社) |
(紀伊国屋書店大手町ビル店、2021年5月3~9日)
1位と3位は実務専門書。1位は「会社法実務の必携書」を帯でうたい、最新の法改正にも対応した内容だ。3位の本は、企業の監査業務に有用な資料を網羅的に掲載している。2位は、テクノロジーの進化を軸に包括的な未来トレンドを描き出した予測本。1月に「2030年と2040年 日米2つの予測本が指し示す未来とは」の記事で紹介した。今回紹介したSDGsの児童書は4位に食い込んだ。5位は2019年刊の経営書。連休明けの実質2日間のランキングだけに、実務専門書に児童書、ロングセラーと普段とは異なる本が上位に並んだ。
(水柿武志)