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Mr. CHEESECAKEの商品は冷凍状態で届く

Mr. CHEESECAKEの商品は冷凍状態で届く

チーズケーキブランド「Mr. CHEESECAKE」(ミスターチーズケーキ、以下ミスチ、東京・渋谷)の田村浩二代表は、主にフレンチの世界で修業を積み、31歳で都内有名レストランのシェフに就任した。しかし、美食を追求し続ける場に身を置くことに違和感を覚えるようになったという。その情熱とこだわりは、なぜ「チーズケーキ」へ向かっていったのか。

ミシュランの星を獲得したレストランのシェフの1人として多忙な日々を送っていた2017年末。美食ガイド『ゴ・エ・ミヨ』日本版で、「期待の若手シェフ賞」に選ばれた。受賞を機に、シェフとしてさらなる高みを――。そんなキャリアを思い描いてしまうのが一般的な感覚だが、田村氏は違った。胸をよぎるようになったのは、むしろ「違和感」だった。

「表彰されること自体はとてもありがたいことです。ただ、賞を取った途端に、レストランを訪れる客層が変わったのを感じました」

田村氏が身を置いていたのはガストロノミー(美食)の世界だ。もともと「非日常」の料理を追求してきた身ではある。しかし、「いかにも食通といった感じの人たちが代わる代わる品定めに訪れるような雰囲気が強まって、嫌気が差してしまった」と振り返る。自分自身も、作る料理も変わっていないのに、受賞の前後で世間の見る目が一変したことに戸惑った。

料理人を志した原体験は、高校の親友たちに手作りしたケーキを、喜んでもらえたことだ。

「キャリアを見つめ直して、その原点からずれてきているなと感じました。そもそも、ガストロノミー料理の『おいしさ』というのは、食に関わる知識や経験値が豊富にあって初めて、本当に理解できるものとされています。いわゆる『一般向け』ではありません。それまではシェフとして有名になりたい一心でやってきましたが、自分の母親や友だちなど、誰が食べても素直においしいと思えるものづくりに立ち戻りたいと考えるようになりました」

その「勝負の一品」がチーズケーキになったのはなぜか。田村氏自身、幼いころから大好きな食べ物であったことに加えて、偶然も後押しになった。

レストランで働くかたわら、渾身の試作ケーキをインスタグラムにアップしたところ、数人から「食べてみたい」と希望が届いた。応じて販売したところ、評判があっという間にSNS(交流サイト)上で拡散。始めて2~3カ月で、月に200万円の売り上げが立つ事業に育った。

「シェフをしながら副業でミスチを続ける方法もあったと思いますが、そもそも1日14~15時間労働が常態化している昔ながらの料理人の働き方は、個人的には持続可能性がないとも考えていました。自分の望む仕事と生活のバランスを実現するためにも、ミスチ1本で勝負しようと決め、18年末に会社を設立しました」

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