日経エンタテインメント!

Eveはダウンロード数1位に

――ユートニックは多彩にカスタマイズできるため、ファンクラブツールとして活用するアーティストなども多いようですね。

人気ボカロPの、はるまきごはんさんはファンコミュニティー「ごはんのおとも」として活用してくれています。彼は曲だけでなく、イラストやミュージックビデオも手掛けているので、ファンたちが2次創作やファンアートをコミュニティー内に投稿できる場を設け、とても盛り上がっています。

また、従来のファンクラブの要素に、ガチャのようなソーシャルゲーム的な機能も盛り込んで人気となっているのが、ミュージシャンのEveさん。彼のアプリ「ZINGAI」は、App Storeのミュージックカテゴリで1位を獲得するほどです。ガチャで獲得できるのは、Eveさんのアニメミュージックビデオなどに出てくるキャラクター。皆さんそれをスクショしてSNSに上げ、盛り上がっています。

新曲に関するクイズに正解すれば、ガチャを引けるといったミッションなどを用意しており、Eveさんの世界観を楽しみながら深められると評判です。またアーティスト側も、ファンに頻度高くニュースやネタを提供できると喜んでもらっています。

――今後はEveさんのケースのような、ゲーム性を取り入れたファンコミュニティーアプリを数多く出していくそうですね。

人気アイドルやアニメ作品などで既に決まっていて、春頃から順次リリースしていきます。将来的には、ガチャなどで集めたコレクションを、ユーザー同士で取り引きできる機能も実装する予定。例えば、Eveさんのガチャで出たあのアイテムが、すごい高値になってるみたいな、アセットとしての価値も高めていければなと。

あとは、海外展開ですね。アニメに代表されるグローバルコンテンツを海外に広げるフックとして使ってもらいたい。また海外のアーティストにも、ぜひ活用していただきたいと思っています。

ユートニック
 2018年にリリースした、タレントやアーティストとファンをつなくプラットフォーム。音源、動画、写真集などを販売したり、ファンとコミュニケーションを取ることが可能。開発不要(ノーコード)かつ、多彩なカスタマイズ機能が売りで、ファンクラブ的な場として活用する例も増えている。セルフ運用の「Entryプラン」と、運営のサポート付きの「Professionalプラン」の2つを用意しており、後者はガチャ、ミッションといった様々な機能も活用できるようになっている。

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スズキの視点

音楽体験を“ソーシャルゲーム”化して、ファンがより楽しめるようにするという取り組みは、今までありそうでなかったもの。それが様々なアーティストに受容されてきているのは、まさに音楽ビジネスの進化と言えます。自らが能動的に“ゲーム”に参加することで、ファン体験がより“バイラルする”のも、このアプリの特徴。2次創作から公式公認のマーケットプレイスになるのも、アーティストや関係するクリエーターへの、新たな収益源として可能性を秘めていると感じました。

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鈴木貴歩
 ParadeAll代表取締役。“エンターテック”というビジョンを掲げ、エンタテインメントとテクノロジーの幸せな結びつきを加速させる、エンターテック・アクセラレーター。エンタテインメントやテクノロジー領域のコンサルティング、メディア運営、カンファレンス主催、海外展開支援などを行っている。

(構成 中桐基善)

[日経エンタテインメント! 2021年4月号の記事を再構成]