治療が必須なのはどんなケース?

前回も述べたが、筆者が逆流性食道炎になったとSNSに書きこんだところ、「私も逆流性食道炎です!」という酒好きたちからのコメントがたくさん返ってきた。

酒豪の中には、「治療が必要」と言われたにもかかわらず、「市販の胃薬を飲んでおけば胸やけも緩和する」と信じて、通院もせずに過ごしている人もいるかもしれない。そんなふうに自分で判断してしまっていいのだろうか。

「グレードAやBの軽症の場合、治療は基本的に本人次第で、つらいと思ったら通院して治療すればいいのです。しかし、グレードCやDの重症となると、そうはいきません。なぜなら、逆流がひどくなると、合併症を引き起こすリスクがあるからです」(秋山さん)

逆流性食道炎の合併症としては、食道からの出血や、炎症を繰り返すことで食道が細くなっていく食道狭窄、そして胃に近い食道下部の粘膜が変性する「バレット食道」などがある。

「食道は、扁平上皮(へんぺいじょうひ)という粘膜で覆われています。一方、胃は円柱上皮(えんちゅうじょうひ)という別の種類の粘膜で覆われています。バレット食道とは、食道下部の粘膜が変性し、胃から連続して円柱上皮に置き換わってしまう状態を言います。長期間にわたってこうした状態が続くと、食道がんに罹患するリスクが高くなります」(秋山さん)

バレット食道

食道がんと聞くと、ぞわっとする……。自己判断なんてもってのほか。重症の場合はきちんと治療するのが必須なのだ。では具体的にどういった治療をするのだろう?

「初期治療では、胃酸を抑え、胃の中の酸性度を弱めるプロトンポンプ阻害薬(PPI)と言われる薬を処方します(4~8週間)。これは軽症でも、知覚過敏で胸やけの症状がある人(前回記事「酒好きの持病? 胃酸が逆流、レモンサワーとの関係は」参照)にもよく効きます。日本で開発され2015年にリリースされたボノプラザン(商品名:タケキャブ)はカリウムイオン競合型酸ブロッカー(P-CAB)と呼ばれ、従来のPPIよりも強力に胃酸を抑えることができます。投与した初日から効果を示し、24時間にわたって安定した薬効を感じることができます。薬効に個人差が少ないのも特徴です」(秋山さん)

また秋山さんによると、「その人の症状に合わせ、食道の粘膜を保護し、胃酸を中和する制酸薬(酸中和薬)、消化を促進させる消化管運動改善薬、胃底部を広げ、げっぷを出にくくする漢方薬の六君子湯(りっくんしとう)も併用できる」という。制酸薬は、胃もたれや胸やけなどの症状が出たときに補助的に用いることが多い。

初期治療を終えて症状や食道の炎症が改善すれば、そのまま投薬を終了し、日常生活に気をつけるだけでよいことも多い。しかし、食道の炎症がひどかった場合は、食道狭窄やバレット食道などの合併症を予防するために、初期治療後も投薬を続けることがある。これを「維持治療」という。

なお、胃酸の分泌を抑える市販薬もある。軽症の場合は、症状が出たときにこうした市販薬に頼るのもよい。しかし、重症で治療が必要な場合は、「きちんと医師の指示に従って投薬したほうがよい」と秋山さんは言う。

次のページ
重症化を防ぐための飲み方・食べ方
ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント