1000年前の北米の大都市カホキア 滅亡はスロー衰退?

2021/5/29
ナショナルジオグラフィック日本版

カホキアの中央広場。現在、この一帯は史跡となり、世界遺産にも登録されている。最近の研究から、この古代都市の住民は、それまで考えられていたような環境破壊を引き起こしてはいなかったことが明らかになった(PHOTOGRAPH BY IRA BLOCK, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

世界遺産にも登録されている米国の古代都市カホキア。今から1000年ほど前、現在の米国イリノイ州にあるこの町は、メキシコより北の北米大陸で最大の人口を誇るまでに急成長した。そこで暮らす人々は、町の中だけで1万5000人、周辺部も入れるとその倍ほどだったと考えられている。しかし、わずか数百年後には人口が減りはじめ、1400年ごろには誰も住まない場所になってしまった。

ミシシッピ川の氾濫原にあったこの古代都市で多くのマウンド(墳丘)が見かってから、考古学者たちはその謎に挑み続けてきた。マウンドの中でも10階相当の高さを持つモンクス・マウンドはじつに1867年まで、米国で一番高い人工物であり続けた。しかし、カホキアがどのように誕生し、どうやって急成長を遂げたのか、そしてなぜ人がいなくなり廃墟と化したのかは、まだわかっていない。仮説はたくさんあるが、データは乏しいからだ。

しかし今回、カホキア滅亡の仮説の一つが除外されそうだ。その仮説とは、過剰な伐採によって洪水が起き、町に住めなくなったというものだ。米イリノイ大学の地質考古学者、ケイトリン・ランキン氏は先日、学術誌「Geoarchaeology」に掲載された研究を通して、伐採説は誤りであると述べるだけでなく、カホキアが環境破壊を引き起こしたため滅亡したという前提そのものに疑問を投げかけている。

ランキン氏はこう述べる。「ヨーロッパ人がやってくる前、カホキアは北米で一番人口密度が高い場所でした。人口が多いことは問題だと考えがちですが、必ずしもそうとは限りません。重要なのは、資源をどのように管理し利用するかなのです」

頻繁な洪水はなかった

1993年、南イリノイ大学エドワーズ校の研究者、ニール・ロピノット氏とウィリアム・ウッズ氏が、カホキアは環境の悪化によって滅びたという仮説を提唱した。カホキア人が町の東側にあった高地で伐採を行ったため、浸食や洪水が起き、収穫が減少したり居住地が浸水したりしたという説だ。

たくさんの木が切られたことは明らかなので、この「過剰伐採説」には説得力があった。ほとんどの考古学者たちは、それがカホキア滅亡の引き金になったか、その可能性が高いと考えた。ただ、その検証はほとんど行われなかった。

しかし2017年、当時セントルイス・ワシントン大学の大学院生だったランキン氏がカホキアのマウンドの近くで発掘を行い、洪水に関連する環境の変化について検証すると、思わぬ事実が明らかになった。過剰伐採説から考えられるような頻繁な洪水はなかったという明確な証拠が得られたのだ。

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自然の資源をむさぼる文化だったのか?
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