答えと解説

正解(間違っているもの)は、(4)残念ながら、薬や治療法はない です。

肛門回りの疾患や排便障害に詳しいJCHO東京山手メディカルセンター(東京都新宿区)大腸肛門病センター長の山名哲郎さんは、便失禁には大きく2つのタイプがあると説明します。1つは我慢しきれずに漏れてしまう「切迫性」、もう1つは気づかないうちに漏れている「漏出性」です。

「肛門の括約筋は二重構造になっていて、内側の括約筋は無意識に締めている筋肉。これが衰えると漏出性便失禁になります。一方、外側の括約筋は意識的に締めることができる筋肉で、これが弱くなると便意を我慢できなくなって切迫性便失禁を起こしやすくなります」(山名さん)

女性の場合、出産で会陰部に裂傷を起こして肛門の括約筋を傷めることがあり、年を取ってから便失禁をしやすくなることもあります。括約筋が断裂している場合はそれを修復する「括約筋形成術」という手術を行います。出産経験がなくても、女性はもともと括約筋の力が男性より弱いので、高齢になると便失禁を起こしやすくなります。

便を漏れにくい形状に維持することが大切

便失禁を防ぐには、便の形状(硬さ)が大切です。ひどい下痢をしているときは括約筋が弱くなくても漏れてしまうことがありますし、逆にしっかりした便が規則正しく出る人は、括約筋が弱くなっていても漏れにくい。「まずは便通を規則的にして、便を漏れにくい形状(硬さ)に維持することが大切です。そのためには、食事にも気をつけなければいけません。脂っこいものや乳製品などお腹がゆるくなる食べ物に注意し、水分を取り過ぎないようにします」(山名さん)

また、外側の括約筋は意識して締められるので、肛門の括約筋を意識的に締める「骨盤底筋体操」で括約筋を鍛えることで、うまく締められるようになる人もいます。「漏出性は意識して締められない内側の括約筋の問題なので体操では改善されませんが、切迫性なら骨盤底筋体操を行うことはいいと思います」(山名さん)

骨盤底筋体操

姿勢は立っていても座っていても、あおむけに寝ていてもOK。(1)肛門を5秒間締める(2)10回続けて1セット(3)これを毎日5セット行う。

バイオフィードバック療法や薬物療法も

切迫性の治療では、「バイオフィードバック療法」という治療法もあります。自分では肛門を締めているつもりでも、お尻の大きな筋肉に力が入ってしまい、ちゃんと外側の括約筋が締められていない方もいます。そんな場合に肛門の締まり具合をモニターに表すセンサーをお尻に入れて、括約筋を締める感覚を、画面を見ながら覚えてもらうというものです。

薬としては、便の水分を吸収して硬くする便形状改善薬があります。ポリカルボフィルカルシウム(商品名:コロネル、ポリフルほか)といって、過敏性腸症候群に使われる処方薬です。それでも便が軟らかい場合は、必要に応じて下痢止め薬を用い、腸の過剰な蠕動(ぜんどう)を抑えます。

もう1つ、薬物療法やバイオフィードバック療法などで改善が見られない場合には、「仙骨神経刺激療法」という治療法もあります。骨盤内に小型の装置を埋め込む手術を行い、仙骨神経という神経を電気的に刺激することで便失禁を改善する方法で、2014年から保険適用になっています。改善率も高く、8割の人は漏れる回数が半分以下になることが確認されています。

(図:増田真一、イラスト:堀江篤史)

この記事は、 「『肛門がかゆい・痛い』『急な便意を我慢できない』読者の悩みに名医が回答」https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/column/18/020200005/101300087/(伊藤和弘=ライター)を基に作成しました。

[日経Gooday2021年4月19日付記事を再構成]

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