人気スライサー5種の切れ味 こんにゃく薄造りで比較
合羽橋の台所番長が調理道具を徹底比較【柔らかい食材編】
東京・合羽橋の老舗料理道具店「飯田屋」の6代目、飯田結太氏がイマドキの調理道具を徹底比較。前回の「人気スライサー5種を検証 極薄カボチャができたのは」に続き、今回は5種類の人気スライサー検証の後編。トマトやこんにゃくなど、柔らかい食材で比較する(価格はすべて税込み)。
◇ ◇ ◇
こんにちは、飯田結太です。包丁と同様に、プロにとって調理道具の必須アイテムであるスライサー。特定の食材専用のものがあるほど種類が豊富で、選べないと思っている人は多いかもしれません。
選ぶときに覚えておきたいポイントは、切れ味が長く続くこと、持ちやすく使いやすいかどうか、そして手や腕が疲れにくいかです。さらに、替え刃や刃の厚みが調節できればいろいろな食材に応用できて便利ですね。刃は平刃のほかに、波刃やギザギザ刃、V字刃などがあり、幅もさまざまです。万能なのは平刃。滑りやすい食材や大きな食材に使いたいときは、ギザギザ刃や波刃がいいかもしれません。V字刃は万能選手ですね。
前回はプロに人気のある5種類のスライサーで、硬い食材の代表として、レモンとカボチャをスライスし、対応能力、切れ味を比較しました。今回は柔らかい食材に対応できるかどうかを検証していきます。私も初めてスライサーでトライした食材があり、大変面白い結果となりました。
今回使用したのは、写真左から、V字刃のベルナー「ベルナーV5」(メーカー希望小売価格6600円)、超極薄0.5ミリメートル厚専用の協和工業「夢ゲンスライサー」(メーカー希望小売価格2750円)、1ミリメートル厚の波刃を使用したアーネスト「スーパーキャベツスライサー」(メーカー希望小売価格2075円)、プロ愛用のロングセラー、ベンリナー「万能野菜調理器ベンリナー」(メーカー希望小売価格2750円)、そして、刃の厚みを0.3~3.3ミリメートルの11段階調節できる、レズレー「アジャスタブルスライサー」(メーカー希望小売価格9790円)の5種類です。
では、完熟トマトのスライスから始めましょう。
手ごわい超完熟トマトを制したのは?
柔らかい食材の代表として用意したのは、完熟トマト。皮は薄いのですがハリがあり、刃に引っ掛かりやすい半面、果肉は簡単につぶれてしまう繊細なもの。完熟になればなるほどおいしいのですが、スライスするのは難しいですよね。検証したら予想とは少し違う結果が出ました。
※スライスの厚さが調節できるものは約1ミリメートル、または1.5ミリメートルに設定。
◆万能野菜調理器ベンリナー
ベンリナー(山口県岩国市)の「万能野菜調理器ベンリナー」は刃に当たった瞬間に果汁が出ましたが、力をほとんど使わずに軽くスライスできました。超完熟でも問題なくきれいにできました。
◆ベルナーV5
50年以上の歴史があるドイツの調理道具メーカー、ベルナーのスライサー「ベルナーV5」は、硬い食材編でダントツの切れ味でした。完熟トマトも薄くて美しい断面に。果汁も出ず、スライスしたトマトにみずみずしさが残っていたのがすごいですね。
◆アジャスタブルスライサー
レズレーの「アジャスタブルスライサー」は、刃の厚みを1.8ミリメートルでスライスしたにもかかわらず、つぶれてしまったものが多かったのが残念。超完熟トマトは難しいようです。
◆夢ゲンスライサー
キャベツがふわふわ食感になると好評の0.5ミリメートル厚の超極薄専用スライサー、協和工業(大阪市)の「夢ゲンスライサー」で超完熟トマトにトライ。皮はきれいに切れましたが、果肉部分はつぶれてしまいました。完熟トマトのスライスには適さないようです。
◆スーパーキャベツスライサー
キャベツの千切り用として人気のある、アーネスト(新潟県三条市)の「スーパーキャベツスライサー」でトライしてみると、水気が多い完熟トマトは、波刃に通すところでつぶれてしまいました。波刃はやはり葉物野菜向きのようです。
検証の結果、完熟トマトは難関でした。断面が美しく、果肉がしっかりついていたのは、ベルナーV5。V字刃は本当に万能選手でした。
1位 ベルナーV5
2位 万能野菜調理器ベンリナー
3位 アジャスタブルスライサー
4位 スーパーキャベツスライサー
ランク外 夢ゲンスライサー
しっかりハリのある皮と、果汁がしたたりそうな果肉を同時にスライスするには、刃が鋭角であることが重要だと分かりました。ベルナーV5のV字刃は、トマトの両サイドと正面から刃が入るので、刃に触れる部分が多く、完熟トマトでもつぶれる前にスライスできるのでしょう。完熟野菜や果物は、どれだけ多くの面に同時に刃が触れるかによって切れ味が変わりそうですね。
刺し身こんにゃくは作れるか?
包丁でカットするときに滑って切りにくいのがこんにゃくです。弾力があるので、包丁に力を入れると、弾力に押されてきれいにスパッと切れないことも多いのではないでしょうか。なかなかのくせ者を刺し身として食べると想定し、検証しました。使用したのは一般的な板こんにゃくです。
※厚さが調節できるものは約1ミリメートル、または1.5ミリメートルに設定。
◆ベルナーV5
さすがに無理では? と想像していたのですが、ベルナーV5だと薄くきれいにスパッと切れました。V字刃は頼もしいですね。
◆万能野菜調理器ベンリナー
プロ仕様の刃を備えるベンリナーですが、こんにゃくは苦手のようです。ちぎれてしまい、断面も少しでこぼこ。大きさもまばらになりました。
◆アジャスタブルスライサー
健闘したのが、アジャスタブルスライサー。水気が少ないぶん、刃に通りやすかったようです。きれいに大きさも均一にできました。
◆夢ゲンスライサー
夢ゲンスライサーの凹凸刃が活躍しました。刃に引っ掛かるので滑りにくく、しっかりこんにゃくを切ることができました。つるつるした食材に力を発揮するのが凹凸刃ですね。
◆スーパーキャベツスライサー
夢ゲンスライサーとは反対に、全くダメだったのがスーパーキャベツスライサー。波刃は滑りやすい食材に適さないようです。
検証の結果、アジャスタブルスライサーとベンリナーは完全な平刃なので滑りやすい食材をしっかりとキャッチすることができず、断面もでこぼこになってしまいました。どちらもちぎれたような形に。一方、今回大健闘したのが、ベルナーV5と夢ゲンスライサーです。どちらも力をあまり入れずにサクッと切れたのが驚きです。
1位 ベルナーV5
2位 夢ゲンスライサー
3位 アジャスタブルスライサー
4位 万能野菜調理器ベンリナー
5位 スーパーキャベツスライサー
番外編
ベルナーV5はどんな食材もスパッと切れるのでしょうか。絹豆腐で試してみたら、湯葉のような薄い豆腐が完成。
スライサーは、刃の形状、幅、厚み調節の有無で、得意な食材と苦手な食材が分かれることが判明しました。刃が鋭くて切れ味が良くても、幅が狭いとスパッと切ることができずに詰まってしまう。また切れ味はそれほど鋭くなくても、ギザギザや凹凸、波状の形状になっていることで、平刃が苦手とする食材がサクッと切れる。よく使いそうな食材を頭に浮かべながらスライサーを選ぶと失敗しにくいと思います。参考にしてくださいね。(談)
(文 広瀬敬代、写真 菊池くらげ)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。