――どんな対策が必要でしょうか。

まず貧困の実態を多くの人に知ってもらうことです。経済協力開発機構(OECD)は、その国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない世帯を相対的貧困とします。この基準に基づき、厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2019年)から算出した日本の相対的貧困率は約16%。相対的貧困世帯で育っている17歳以下の子供の割合は14%に上ります。今、日本で暮らす子供の7人に1人が相対的貧困に当たることになります。

――衝撃的な数字ですね。

日本はGDP(国内総生産)世界3位の経済大国で、その社会の相対的貧困は発展途上国のような深刻なものとは違うと思った人もいるかもしれません。でも、僕自身痛いほど実感していますが、先進国における相対的貧困もまた、深刻な問題です。

友達が普通にしている家族旅行や習い事ができない。スポーツ観戦に誘われても自分だけ行けない。周囲と自分を比べて日々、「お金がなくて不幸」という思いにさいなまれ、やがて自信も将来への夢も持てなくなってしまいます。

相対的貧困は子供の心を深く傷付けるだけでなく、学習や能力発揮の機会を奪うことにもつながります。大阪府が実施した調査では、経済的な理由で子供を学習塾や習い事に通わせることができなかったとの回答が、貧困世帯で3割を超え、一般世帯を大きく上回りました(下グラフ)。

注:「一般世帯」は世帯所得が等価可処分所得の中央値以上、「貧困世帯」は同50%未満 出所:大阪府「子どもの生活に関する実態調査」(2017年)

――OECDの調査では、日本の教育機関への公的支出割合はGDPの2.9%(17年)で、38カ国中37位。教育への公的支出の少なさも日本の課題です。

教育支出は国にとって「未来への投資」です。惜しむべきではありません。こう話すといつも「財源がない」と反論されますが、もっと長い目で考えるべきです。

より良い教育を受けた子供ほどより多くの税金を納めるようになる可能性が高いことは、様々なデータが裏付けています。逆に、貧困ゆえに十分な教育を受けられなかった子供が、将来仕事に就けず、生活保護を受給するようになれば政府支出が生じます。さらに、その子が働けば国に入ってくるはずだった税金が得られなくなるという2重の損失が生じるのです。

日本財団と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの試算では、貧困家庭を放置することで、1学年当たり2.9兆円の経済損失と1.1兆円の政府支出が生じてしまうそうです。競争力のある国はどこも公教育にきちんと投資していますが、残念ながら日本はそうではない。国民が声を上げないと、政治は変わらないと思います。

ビジネス書などの書評を紹介