昼寝の多さは遺伝?生活習慣病に関わる遺伝子を発見

2021/5/25
ナショナルジオグラフィック日本版

写真はイメージ=PIXTA

近年、大規模な遺伝研究コホート(遺伝子を提供するボランティア集団)を舞台に、進展著しい遺伝子解析技術を駆使することで、様々な病気や体の機能の仕組みが明らかにされつつある。睡眠医学の領域でも、最近、米ハーバード大学の研究グループが昼寝の頻度と関連する遺伝子を多数見つけ、その多くが生活習慣病と関連していることを明らかにした。

昼寝という日常的かつ自己選択的だと思われている行動に遺伝子が関与していたという事実にも驚きを覚えたが、見つかった遺伝子群の多くが生活習慣病やその原因となる睡眠障害の罹患(りかん)リスクと関連していたのを知って「なるほど!」と膝を打つ思いであった。なぜなら、これまで疫学的事実として知られていた昼寝と生活習慣病リスクとの関係が単なる相関関係ではなく因果関係である可能性を示唆しているからだ。

これまでも睡眠不足(睡眠負債)による日中の眠気や昼寝の話題は何度も取り上げてきた。「1時間超える昼寝は危険 シエスタは短めに」では昼寝のテクニックについて、「ああ眠れない…そこは『睡眠禁止ゾーン」だった」では、そもそもシエスタの時間帯にナゼ眠気が生じるのか、そのメカニズムについても解説している。

休日の昼寝は心地よく、安らぎの時間と感じている方も多いと思う。ところが、昼寝好きが思わず眉をひそめてしまうような研究結果が次々と報告されている。例えば、昼寝の回数が多い、昼寝が長いことが将来的に高血圧や糖尿病、心臓病などの生活習慣病の発症や、ひいては死亡リスクの増大と関連する、などはその代表である。

昼寝はうつ病や認知症などの精神疾患とも関連している。「認知症患者の睡眠障害への対処法を考える」でも触れたが、日中の眠気の強さや昼寝の長さが認知症の発症リスクの高さと関連していることが繰り返し報告されており、最近では過去の数多くの報告を統合したメタ解析研究でもその関係性が再確認されている。

昼寝は生活習慣病の原因? それとも症状?

不眠や睡眠不足であれば生活習慣病やうつ病のリスクになるのはイメージしやすいのではないだろうか。実際、短時間睡眠が続いたり睡眠の質が低下したりすると、交感神経系の緊張が高まって血圧や血糖値が高くなる、抑うつやストレス反応が強まる、インスリンの効果が出にくくなって糖代謝が悪くなる、摂食ホルモンが変化して食欲が増す、体の炎症が進むなど、生活習慣病やうつ病の発症に直結する心身機能の変化が比較的短期間に生じることが知られている。

一方、心地よい昼寝がどのように心や体に悪さをするのか、実はほとんど分かっていない。すぐに思いつくのは、両者の間には相関関係はあっても必ずしも因果関係はないのではないかという疑問である。つまり、風が吹いておけ屋がもうかっても、風とおけとの間には直接的な関係はないのと同様に、昼寝が直接これらの疾患を引き起こすのではなく、疾患にかかりやすい人は何らかの原因で昼寝をしがちなだけかもしれない。

例えば、認知症が発症する前段階の高齢者ではすでに覚醒を促す脳神経の機能に何らかの異常があるために昼寝が長くなるのかもしれない。また、抑うつ傾向があるがうつ病を発症するに至っていない人は、日中の活発さがすでに失われ、昼休みや特に休日は横臥(おうが)することが多く、そのまま昼寝をしてしまったのかもしれない。つまり昼寝はこれらの疾患の初期症状(前駆症状)だった可能性がある。このような見かけ上の関係性は初期症状バイアスと呼ばれる。

因果関係を証明するには昼寝がこれらの疾患を引き起こすメカニズムを解明する必要があるが、なかなか糸口がつかめずにいる中、ここ数年、昼寝の頻度や長さと関連する遺伝子が続々と見つかり、薄ぼんやりとだが光が見えてきた。冒頭で紹介したハーバード大学による発見もその一つである。

この研究は約50万人が参加している英国バイオバンクの遺伝情報を活用して行われた。このバンクには、英国在住の40~69歳のボランティアが自身の遺伝子情報(ゲノム)と血液、尿、唾液などの生体試料、ライフスタイルや健康情報を提供し、その後も追跡研究に協力している。

ハーバード大学のグループが彼らの遺伝情報を解析したところ、昼寝の頻度と関連する123の遺伝子座(遺伝子の領域)が見つかった。参加者はライフスタイルに関する質問の中で、「日中に昼寝をしますか」という項目に、「したことがない/まれ」「時々」「通常」「答えたくない」の4つの中から回答している。このような大ざっぱな質問で、昼寝習慣に関連する遺伝子座がよくも見つかったものだと感心するが、数十万人という大規模サンプルの検出力のたまものだろう。

参加者のうち約10万人はアクチグラフという腕時計型デバイスで客観的な睡眠計測も行っている。123の遺伝子の内の幾つかは昼寝が疑われる休息時間の長さとの関連が確認されている。自己申告だけではなく客観的昼寝データでも関連が見られたことはこのデータの信ぴょう性を高めている。

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「肥満―眠気経路」に関わる遺伝子も
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