男性の更年期 うつや不眠、動脈硬化のリスクに注意

NIKKEIプラス1

写真はイメージ=PIXTA
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中高年男性が気分が沈む、やる気が起きないといった状態になるのは男性ホルモンの減少が原因かもしれない。加齢やストレスで男性ホルモンの分泌は減るが、生活習慣の改善などで回復も期待できるという。

男性更年期障害として知られる「LOH(加齢男性性腺機能低下)症候群」。主要な男性ホルモンであるテストステロンの減少から心身に様々な不調が表れる病気だ。女性の更年期障害は閉経を迎える50代前後から起こるが、男性のテストステロン減少は30~80代と幅広い年代で生じる。

「女性の場合はほてりなど身体症状が多いのに対し、LOH症候群は抑うつや意欲の低下など精神的な症状が中心になることが多い」とマイシティクリニック(東京・新宿)の平沢精一院長は指摘する。国内の潜在患者数は約600万人と推定される。

テストステロンは筋肉質でがっしりとした骨格の体をつくるとともに、精神面にも働いて積極性や活力を高める作用があるという。

日本メンズヘルス医学会理事長も務める順天堂大学の堀江重郎教授は「テストステロンは社会の中で自分をアピールするのに欠かせない社会性のホルモン。コロナ禍で人に会う機会が少なくなって分泌が減り、LOH症候群になる人も増えている可能性がある」と説明する。好きだったことに興味が持てなくなったといった状態が続く場合は気を付けたい。

代表的な治療法はテストステロンの補充。2~3週間ごとに注射する方法がある。症状が軽ければサプリメントや漢方薬を使うケースが多い。堀江教授は「漢方薬では『補中益気湯(ほちゅうえっきとう)』がよく使われる。がっしりした体格で足腰に痛みがあるような人なら『八味地黄丸(はちみじおうがん)』、若くてイライラや不安が強い人ならば『柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)』もいい」と助言する。

テストステロンは加齢やストレス、生活習慣によって減るが、逆に食事や運動によってある程度は増やすこともできるのだという。

食事ではたんぱく質をしっかりとるよう心がけたい。ニンニクと一緒にたんぱく質をとると、テストステロンが増えやすいという実験結果もある。「テストステロンの材料はコレステロール。薬によってコレステロールの数値を過度に下げてしまうのはよくない」と平沢院長は話す。

亜鉛やビタミンDのほか、スイカや冬瓜(とうがん)などウリ類に含まれるシトルリンという成分もテストステロンを増やす作用があるとされる。アルコールの飲みすぎはもちろんよくないが、特にビールには注意したい。平沢院長は「ビールの原料であるホップには女性ホルモンに似た作用がある。飲みすぎると、テストステロンの分泌が阻害され、減ってしまう」と説明する。

やりすぎはいけないが、適度な運動はテストステロンを増やす。とりわけ野球やサッカー、テニスといった他人と競うスポーツを勧める専門家が多い。

社会性のホルモンと呼ばれるだけに、人と会うことも大切だ。「特に異性と接することでテストステロンは増える」と平沢院長。異性の目を意識し、好かれようとする気持ちがテストステロンを高めてくれるのだという。

LOH症候群を放置すると動脈硬化が進む、寿命が短くなるといった報告もある。気になる場合にはセルフチェックしてみよう。堀江教授がつくったリストを見て、10項目のうち、3つ以上当てはまる場合は要注意。メンズヘルス外来や男性更年期外来を受診して自分の状態を確認するとよさそうだ。日本メンズヘルス医学会のホームページでは全国の専門医を紹介しているので活用するのもいい。

(ライター 伊藤和弘)

[NIKKEI プラス1 2021年5月8日付]

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