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やはり1貫88円の玉子。切り込みにシャリを仕込んでいる。姿が独特で、「うわーっ」と女性客から声が上がる一品だ

東京・杉並のすし店で5年修行した後は、料理の引き出しは多い方がいいと、和食店でフグやスッポン料理も学んだ。28歳で独立する直前に築地のすし店に勤めた。そこで働いていた先輩に紹介してもらったのが、マグロ専門仲卸大手やま幸(東京・江東)だ。多くの高級店を顧客に抱える仲卸で、独立したら、絶対にやま幸のマグロを買いたいと思っていたという。

「やま幸さんのマグロは、身質が軟らかいのが特徴。時計だったらロレックス、車ならベンツ、マグロはやま幸さんというのが僕の中であって、あこがれだったんです」と新田さんは目を細める。最初は社長に店の名前も覚えてもらえず「結構ショックだった」と苦笑いするが、ビブグルマンに選ばれた際には祝いの花が届き、「これからは追う立場じゃなく追われる立場になるから、心してやったほうがいいよ」と社長から声をかけられた。

ネタケースには、どれにしようかと悩みそうな新鮮なネタがずらりと並ぶ。「薄利多売なので、手元に置かないと早くさばけないんです」と新田さん

やま幸のマグロは1柵、2柵ぐらいの仕入れに留まる店もあるというが、新田さんの店は単位が違う。営業時間を短縮している現在の緊急事態宣言下でも、経営する全3店で「10キロぐらいどかっと買う」という。そのぐらい売り切る自信があるのだ。昨春の緊急事態宣言のときには、オーダーした以上のマグロがやま幸から届いた。「休業した店が多かったので、マグロが売れない。でも漁師さんが苦しいから、やま幸さんはどんどんマグロを買われていたんです。だから、オーダーした倍以上のマグロが届いたりしましたが、何キロになっても断らずに買いました。うちは閉めずに時短で営業をしていたので、毎日売り切るため、お通しにマグロのステーキを出していた(笑)。いつもはシジミの一番だしなんですけどね」。そうした新田さんの心意気は、やま幸の社長にも届いたに違いない。

テークアウトも人気

ちなみに、昨年の緊急事態宣言時のすし宗達の売り上げは、前年同期比で122パーセントにのぼる。売り上げを押し上げたのは、1600~3600円(税別)のテークアウトのすし折だ。「15席の小さな店なのに1日70食ぐらい出た。すしを握る際は足でリズムを取るのでまるでスポーツ。足がつるんじゃないかと思いました」と振り返る。なお、すし光琳でもテークアウトを行っており、現在の緊急事態宣言下でも人気だという。

こうばしい香りをまといながら、食感はふわふわのアナゴの握り

ネタのこだわりは、マグロだけではない。アナゴの仕入れ先もミシュラン星つき店と同じだ。産地は長崎・対馬、宮城・松島、江戸前のいずれかと決め、1本400~500グラムある大きなアナゴを仕入れる。「高級店ではその半分ぐらいのサイズのアナゴを使われていたりするのですが、大きいアナゴはふわふわに仕上げられる。脂ののりも含め、僕はこのぐらいの大きさのアナゴがとても好きなんです」と新田さん。

ふわふわのネタに合わせるシャリは軟らかく握る。「おすしは、シャリとネタが同時に喉を通るのが理想」と考えているからだ。シメサバは、薄く切ったネタを3枚重ねて握るが、これは「厚く切るとサバのいやな部分も少し感じたりする」ため。薄いネタを重ねて握れば、それがなくなりぜいたく感が味わえる一方、シャリとの相性もよくなる。

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白子焼き、真ダコのやわらか煮、あん肝ポン酢……
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