日本の値段の非常識 安さ追う個人と値下げに走る企業
「安いニッポン」には経済停滞に苦しむ日本の姿が浮かび上がる
日本の常識は世界の非常識――。ガラパゴス化した日本の特殊性を示す表現だが、日本国内の値段をめぐる人や企業の考え方もそうだ。例えば8200円の東京ディズニーランドの入園料は高いか、安いか。今回紹介する『安いニッポン 「価格」が示す停滞』は、国内外の様々なモノやサービスの価格を比較しつつ、その背景にある経済成長で米欧アジア勢に取り残された日本の姿を描いた一冊だ。
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著者の中藤玲氏は、日本経済新聞記者で1987年生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業し、米ポートランド州立大学に留学経験もあります。愛媛新聞社を経て2013年に日経入社。これまで食品や電機、自動車、通信の各業界の企業取材のほか、M&A、働き方など幅広い領域を担当してきました。本書は2019年12月に日経新聞・日経電子版で掲載した同名の連載企画を基に、その後の新型コロナウイルス感染拡大の最新状況を取材し加筆して、構成しています。
日本のディズニーランドは「世界で最安値水準」
世界各地のディズニーランドの入園料(1日大人)をみると、パリは約1万800円、米フロリダで約1万4500円といずれも日本(8200円)を上回っています。日本では6年間で合計2000円を値上げしたにもかかわらず、「世界で最安値水準」と著者は指摘します。
同じく「100円均一店」のダイソーを運営する大創産業(広島県東広島市)は海外に2000店以上も出店していますが日本が最安値水準。理由は海外では人件費や賃料など経費がかかるためだといいます。日本国内の価格が安いのは長引くデフレを背景に企業が価格転嫁できていないとする専門家の見方もあります。
(第1章 ディズニーもダイソーも世界最安値水準 38ページ)
世界の中で「安いニッポン」の価格なのに、日本人が高いと感じてしまうのはなぜか。著者は、物価が上がらない以上に人々の所得水準が上がらないという点に注目します。