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“韓国発”が世界標準に!?

「VenewLive」 AR技術による演出やカメラアングルを選べるマルチビュー機能、4K映像、ライトスティックとの同期機能などを実装しながら、安定した環境でライブが見られるデジタル・ライブ・ストリーミング・プラットフォーム。BTSのオンライン公演『BANG BANG CON The LIVE』『BTS MAP OF THE SOUL ON:E』でそのクオリティーは実証済だ。2月18日にはVenewLive上で、Big HitとUMGが戦略的パートナーシップの締結を発表。Big HitがUMG傘下のゲフィン・レコードと共に、米国ロサンゼルスを拠点にジョイントベンチャーを設立し、アメリカ市場初となるK-POPボーイズグループのプロジェクトを始動させることなどを明かした (C)Big Hit Entertainment

併せて注目したいのが、ストリーミングプラットフォーム「VenewLive」だ。20年5月にBig Hitは、Kiswe Mobileと提携し、同月14日にBTSのオンラインコンサート「BANG BANG CON The LIVE」を開催。コンサートを機に、有料ファンクラブ会員数は1万人以上増加し、Kisweは最高同時アクセス数約75万人以上の環境でも、安定したストリーミングが実現できる技術力を見せた。その後、合弁会社「KBYK Live」を設立し、共に「VenewLive」の立ち上げに至った。21年2月の発表で、ここへの投資に名乗りを上げたのが、YGとUMG。YG所属のBLACKPINKは、現在北米で大成功を収めており、YGにとっても、「VenewLive」にとってもWIN-WINの提携だろう。

UMGもまた、「VenewLive」に所属アーティストらを出演させる計画がある。同社の所属アーティストには、レディ・ガガやテイラー・スウィフト、ビリー・アイリッシュ、マルーン5など世界トップのアーティストも含まれる。もしかすると、「VenewLive」がK-POPの枠を越えて、一気に世界標準のストリーミング・プラットフォームに成長する可能性もあるかもしれない。

20年11月には、「Weverse」に初の韓国発以外のアーティストとして、アメリカのシンガーソングライター、グレイシー・エイブラムス(映画『スター・ウォーズ』シリーズで知られるJ・Jエイブラムス監督の娘)がファンコミュニティーをオープン。次いで、ニュー・ホープ・クラブやアレクサンダー23らも開設している。今後はさらに多くのアメリカのアーティストが「Weverse」に参加し、「VenewLive」と「Weverse」の両輪で活躍する可能性も考えられそうだ。

ゲーム業界も新規参入

韓国のオンラインゲームの大手メーカー、NCSOFTがリリースした新たなプラットフォーム「UNIVERSE」は134カ国でリリース。IZ*ONEやMonsta X、カン・ダニエル、AB6IX、CIXらが参加し、昨年11月から始まった事前登録時点で世界中から約400万人を集めた。2月14日に開催された無料オンラインコンサート「UNI-KON」にもIZ*ONEやMONSTA Xら14組が参加し、164の国と地域から約260万人が視聴している。

「UNIVERSE」は、動画配信やラジオ、オンライン写真集などのコンテンツや、アーティストとファンのコミュニケーション機能に加えて、テクノロジーを使ったゲーム的要素のあるコンテンツが特徴で、既存のプラットフォームとはまた違う方向性を持っている。例えば、アーティストをスキャンして作られた3Dキャラクターをスタイリングしたり、そのキャラクターを使用してMVなどが製作できるコンテンツなどがある。さらには、アーティスト自身の声を使って開発したAIボイスをベースにした音声通話が受信できる「プライベートコール&メッセージ」機能もユニークだ。ローンチしたばかりで、日本語表現やアプリ自体の使いやすさはこれからの部分も多いが、今後、ゲーム的な見せ方をどう発展させるのかに期待したい。

正式ローンチ前の同月5日に、NCSOFTは、21年中にCJ ENMとの合弁会社を設立することを発表。新しいアーティストを発掘するための番組を制作し、UNIVERSEのサービス内と、CJ ENM側で放送予定だとしている。その内容はCJ ENMが得意とするサバイバルオーディションなのか……詳細は、まだ明らかになっていない。

目まぐるしく動く韓国音楽業界だが、果たして「バーチャルワールド」の覇者は誰になるのか。その行く末が楽しみだ。

(ライター 横田直子)

[日経エンタテインメント! 2021年4月号の記事を再構成]※情報は掲載時点のものです