――AIの機械学習と組み合わせる方法もあるそうですね。

「米グーグルが2017年に提案したフェデレーテッドラーニング(連合学習)では、データを集約せず分散した状態で機械学習を行います。例えばスマートフォンやパソコンのような端末には購買履歴のような個人の情報が集まりますが、これを外部に持ち出すことなしに、端末ごとに機械学習を行います。学習によって得られた学習モデルの改善につながる要素だけを集約して全体として大規模な学習を行うというやり方です」

――通常の秘密計算との違いはどこにあるのでしょうか。

「扱える計算の範囲が違います。秘密計算は、準同型暗号を使ったものでも、秘密分散によるものであっても、理論的にはあらゆる種類の計算を扱うことができます。これに対して、フェデレーテッドラーニングの用途は、ディープラーニングをはじめとする機械学習を分散して行うことに限定されます」

「ただ、こうしたビッグデータとして収集される個人データの秘密を守りながら、機械学習によってAIモデルを作ったり、データ解析をしたりする用途は非常に大きいです。NICTや神戸大学などが参加して『プライバシー保護データ解析技術の社会実装』をテーマに科学技術振興機構(JST)で国の研究プロジェクトを進めていますが、ここではフェデレーテッドラーニングのような協調学習に準同型暗号技術を適用した『DeepProtect』というNICTで開発した技術を使っています」

――どのような成果が上がっていますか。

「DeepProtectを使った実証実験では千葉銀行や三菱UFJ銀行など、5つの金融機関と協力して、振り込め詐欺などの不正送金を自動検知するシステムを作ろうとしています。個々の金融機関が持つ送金記録のデータの秘密を守りながら、データ全体で深層学習を行い、検知システムのアルゴリズムを開発しています。近く具体的な成果が発表できる見通しです」

――秘密計算技術の実用化に向け、どのような課題がありますか。

「秘密計算の理論研究は古くからありましたが、近年の研究で計算時間が短くなるなど社会実装が可能なレベルになってきました。金融や医療といった具体的な分野で実際に活用できることを実証してみせることが重要です。秘密計算の社会実装を目指すスタートアップ企業の活動も活発になっており、技術の普及に向け、いよいよ動き出しているという印象です」

(編集委員 吉川和輝)

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