2021/5/12

人気の化粧品売り場を徹底リサーチ

育休からの復帰当時、オムニチャネル戦略推進部は全員が京都本社のメンバーで、東京勤務は私だけ。お客様一人ひとりと深く、広く、長くつながるためのインフラをつくることを目標に、リアルな店舗のあり方を刷新するためのアイデアが求められていました。

子育てによる時間制約があり、日常のコミュニケーションはテレワークが中心。そんな私が「今の自分にできることから」と取り組んだのがマーケティング・リポートの作成です。さまざまなブランドの下着売り場を30カ所以上まわって接客してもらい、その他、下着に限らず伸びている業界や売り場の特徴を探りました。大きなヒントを得たのが、百貨店の化粧品売り場です。デジタル技術を活用した肌診断データを活用することで、一人ひとりに合った提案ができ、顧客の心をつかんでいる。インナーウエアでも同じようなことができるのではと思い立ちました。

人に見られずサイズを測り、下着を選べるAI接客やアバター店員は、育休中に知り合ったママ友の意見も参考にしています。産後の体形で、「キレイな店員さんがいる下着売り場に行くのは抵抗がある」「計測で誰かに体を見られることに抵抗がある」という声を聞いて、共感しました。仕事以外の交友関係が広がる産休・育休期間は、生活者視点に立ち返るいい機会になりました。

東急プラザ表参道原宿店では、アバター接客サービス「パルレ」を展開(予約制)。より気軽にインナーウエア選びの相談ができると好評
バスト、ウエスト、ヒップのほか、腕の長さ、二の腕、太もも、ふくらはぎなどは左右それぞれ計測することができ、下着はもちろん、洋服購入時の参考にしている人も多いという

チームづくりは尊敬できるメンバーをスカウト

リサーチ結果を基に、「3D smart & try」プロジェクトの企画を上司に提案すると、すぐに経営会議にかけようと言っていただけて、プロジェクト化されました。とはいえ、私は育休明けから間もなく、周りに頼らなければ実現できない状況。いいメンバーに助けてもらうことができれば、プロジェクトはきっと成功すると思いました。

そこで、プロジェクトメンバーは全社を横断する形で、それぞれの専門性をもつ企画や販売、人間科学研究所など、これまでのキャリアで接点があり、信頼できる部門に参加をお願いしたんです。また、実行フェーズでは、公募という形で自ら手を挙げてきてくれる人を募ることでチームを強化しました。一緒にチームを組みたいのは、自分にないものを持っていて弱みを補ってくれる人。尊敬できる人であること、そして「この人となら今までにないものをつくれそう」という直感も大事にしています。

私が、現在の部門メンバーや プロジェクトなどのチームづくりをするときは、一緒に働きたいと思う人に、「あなたは○○の理由で、このプロジェクトに必要な人材だ」と直接口説くことが多いです。目指すゴールとその人の強み、私が必要としているスキルを具体的に伝えるためです。メンバー全員が自分はチームに必要な人材だと自覚し、その人の得意分野で活躍してもらい、適性の高い仕事をしてもらうことにも心を配っています。

篠塚厚子
ワコール イノベーション戦略室 開発部長/シニアフェロー。京都大学卒。2005年ワコールに入社。百貨店営業などを経験後、ものづくり部門にて他社ODM事業やマーチャンダイザーを担当。国際部門では、海外のEC事業支援や事業再編、M&Aに携わり、その後子会社にてブランドマネージャーや下着以外のMDを担当する。2017年、総合企画室オムニチャネル戦略推進部に異動。2019年4月に3D smart & tryサービスを立ち上げ、翌年、IBM「Women Leaders in AI」の一人に選ばれる。2021年4月から現職、ワコールでのフェロー職第1号となる。

(文 川辺美希、取材・構成 加藤京子=日経xwoman doors、写真 鈴木愛子)

[日経xwoman 2021年4月20日付の掲載記事を基に再構成]

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