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売りはマグロの「だり半」 希少な脳天、そのお味は?

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NIKKEI STYLE

「だり半」という一風変わった店名のすし店がある。正確に表現すると、すし居酒屋というべきか。「マグロならだり半」を自称しているが、その名の通り、マグロのうまさを売りに、しかも安いという店だ。現在は3回目の非常事態宣言下につき休業しているが、再開後にはぜひとも訪問していただきたく、その魅力をお伝えする。

「だり半」は、東京・代々木にある1号店の「鮨 だり半」と新宿駅南口近くにある2号店の「鮨のだり半 南口」。2店は歩くと5分くらいの近さにある。1号店はまだしも、2号店は、とてもすし店には見えない。店頭にはメニュー写真を並べたPOPがあり、ちょっと見にはにぎやかだが、ガラスで覆われた外観は、なんとなく洋装品店の居抜きのよう。オフィスビルの1階のため、仕方ないとも思えるが……。

ところが、人気はすさまじい。午前11時からの通し営業で、ランチやディナー帯はともかく、平日午後3時くらいの時間帯も客が入ってくる。注目したいのは、多人数の客よりも2人客や1人客が多いことだ。女性客や家族客も多い。席数は40~60席。1人の予算は4000円くらいだろう。

人気の秘密は、刺し身のうまさ。その日の仕入れによって提供するネタは変わってくるが、訪れた日の「本日の刺身盛り合わせ」は、マグロの赤身7~8切れがゴチャっと盛り付けられ、白身魚3切れと赤貝3つ分くらいのヒモと一緒に出てきた。ご丁寧に小柱のごく小さいやつも付いてきた。これで1320円。普通のすし店で刺し身を頼むと、だいたい一皿で2000円以上のことが多いが、「だり半」は、すし店というより居酒屋なのだ。すし居酒屋と表現したのは、そのためだ。

「マグロならだり半」を売りにしているだけにマグロメニューは、買いだ。例えば、「鮪まみれ」(2178円)は、20センチはあろうかという骨付きの中落ちと、トロタク巻き6本、ネギトロ軍艦2貫に、赤身2貫がついている。1人では食べきれないほどの量だ。

希少な部位も魅力だ。例えば、マグロの脳天。時季によって調理法を変えているようだが、2回訪れた時は、薄切りにして焼いて食べる「脳天マグロの焼きしゃぶ」を出していた。それで1000円弱。脳天自体は、割とあっさりとした淡泊な部位のため、たぶんさっぱりと食べられるのだと思う。絶対食べたい一品だが、用意している数が少なかったためか、残念ながら2回とも売り切れ。3度目はぜひ挑戦したい。

もちろん、マグロ以外の鮮魚も充実している。「アジのなめろう」は638円、九州名物の「ブリのゴマ和え」も748円。チェーン居酒屋よりは少し高いが、鮮度は抜群。価格帯では同程度の街場の個人居酒屋を質で凌駕(りょうが)する。

一番驚いたのは、貝類の良さだ。「活貝盛り」(1628円)は、3種類の貝を盛り合わせたもの。訪店時は、サザエとホッキ貝、赤貝を盛り合わせていたが、サザエはコリコリ、ホッキ貝や赤貝も甘みがあり、十分満足できる内容だった。カウンターに座って見ていると、厨房では、1人がひたすら貝を処理していた。これですしがおいしくない訳はない。

すしはお得感を出すためか、いろいろなキャンペーンを打っている。南口店の場合、毎週木曜日は30%OFF、訪れた日は金曜日だったが「今日は寿司の日」と銘打って、30種類のネタをすべて1貫100円で提供していた。回転寿司のような安ネタだけじゃない。大トロ、中トロ、ノドグロ、天然ブリ、赤貝など普通なら200~300円取られるような大ネタが並ぶ。まさしく薄利多売なのだ。

だから、客は宴会のための複数客だけでなく、1人客やカップルが多い。居酒屋的な使い方だけでなく、ちょっと高級なランチとしても利用されている。女性客もびっくりするくらい多い。おいしさとコスパを両立している強みだろう。

店に行って楽しいのは、カウンター内の職人やフロアの男性が、やたらに明るいこと。こちらからの質問に対し、魚種はもちろん、味わいに関しても素直に答えてくれる。サービス精神が旺盛だ。雰囲気は違うが、「カフェ ラ・ボエム」などを展開するグローバルダイニングが洗練されたイケメンによるサービスで客を魅了したように、威勢の良さと愛想で客の中に入っていく。そうすると思わず、お酒を追加注文してしまう。

ある女性の1人客は、ヤリイカのゲソを指して、「それってホタルイカですか?」と真顔で聞いていた。思わず笑いたくなったが、それに対して職人は丁寧に説明している。家庭で鮮魚を食べなくなっている中、そんな情報を提供する場としても「だり半」は機能している。

ところで、「だり半」という店名の語源は何なのか? スタッフに聞くと、すし店の「隠語」だそうだ。数字を伝える際に使う言葉で、1が「ピン」、2が「リャン」。ここまでは分かるが、3は「ゲタ」。鼻緒を結ぶ穴が3つあることから来ている。そして「だり」は4を意味する。江戸時代の駕籠(かご)かきが使っていたらしいのだが、詳細は不明だ。

オーナーは、刺し身やすしを安く食べてもらいたいという思いを持って「だり半」を作ったそうだ。「だり」は4で、「半」は半分。予算4500円相当の店にしたかったようだ。そうした思いの中で「だり半」を経営するオリエンタル(川崎市)は、神奈川で数店の海鮮居酒屋を経営している小さな会社だ。

スタッフによると、もともと鮮魚卸を営んでいたそうで、それで安く仕入れることができるとのこと。スタッフは「オーナーからは、とにかく安く提供して、お客さんを喜ばせろ、と言われています」という。まさに薄利多売の世界だ。2013年の1号店出店から2号店出店まで、6年かかったことも、この話を聞くと腹落ちする。

鮮魚の世界は、バイイングパワーが効きにくい。工業生産品に近い肉類と違い、鮮魚は、事前の生産予測が難しく、その時の水揚げですべてが決まってしまう。鮮魚居酒屋としては、新橋を発祥にした「魚金」が有名だ。現在50店以上を展開する企業に育っている。だが、新型コロナウイルス下の現在、刺し身はテークアウトやデリバリーに向かないため、とんかつなど新しい業態にチャレンジしている。

でも、おいしい刺し身やすしを安く食べたいというのは客の本能的な欲望だ。だり半は、それを満たしてくれる。家の近くにぜひ欲しいが、簡単に店を増やせるとは思えない。1人の客として、なんとか頑張って欲しいとエールを送りたくなる店だ。

(フードリンクニュース編集長 遠山敏之)

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