行動経済学を知る3つのメリット
続く見開きでは行動経済学を知って得られる3つのメリットが示される。まず得られるのが「マーケティング」の深い理解、また人間の傾向がわかれば、人を良い方向に導くことができ、部下の「マネジメント」や、自分自身の「自己実現」にも有効に働くという。「マーケティング」「マネジメント」「自己実現」の3つが行動経済学を知るメリットだ。
このようにアウトラインを示したあと、6章構成で行動経済学を解説する。第1章が基礎。行動経済学の考え方を学ぶ。2章は「人間が即座に判断できるのはなぜ」から始まって、そうした思考プロセスを掘り下げる。3章は行動経済学のもっとも代表的な理論「プロスペクト理論」を「人は損と得を合理的に見分けられる?」といった興味深い問いからひもといていく。
4章ではマーケティングでの活用事例、5章は行動変容を促す「ナッジ」の理論と事例、6章では「取引を有利に進めたい」「なりたい自分になる」など、ビジネスパーソンに身近な応用例に触れる。行動経済学が「わかった気になる」のはもちろん、使ってみたくなったり、もう少し勉強してみたくなったりしそうな構成だ。
「ここ3週にわたってぶっちぎりの売れゆきになっている」と同書店でビジネス書を担当する岡崎史子さんは話す。心理学と経済学を組み合わせた行動経済学は、ちょっとした人間の心の秘密を解き明かす雰囲気もあり、ユーザーや消費者の心をとらえにくいコロナ下で、ビジネスパーソンの関心をひいているようだ。
息の長い売れ筋3冊が上位に
それでは、先週のベスト5を見ていこう。
(1)DX人材の教科書 | 石井大智・鶴岡友也著(朝日新聞出版) |
(2)サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学 | 阿部誠監修(新星出版社) |
(3)今さら聞けない投資の超基本 | 泉美智子著(朝日新聞出版) |
(4)世界最高の話し方 | 岡本純子著(東洋経済新報社) |
(5)1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書 | 藤尾秀昭編(致知出版社) |
(三省堂書店有楽町店、2021年4月19~25日)
1位にデジタルトランスフォーメーション(DX)人材に関する本。今回紹介した行動経済学の本は2位だが、店頭での本の動きでは3週目に入ってもぶっちぎりの勢いは止まっていないという。3位はこのところ上位が続いている投資の入門書。4位は1月に「企業幹部コーチが説く コロナ禍を生き抜く『話し方』」の記事で紹介した話し方の本だ。5位は、経済人やスポーツ選手、さらには無名の市井の人まで、本人が語った仕事や人生についての話を日めくり的に採録した本。息の長い売れ筋がベスト5の3冊を占め、ビジネス書の売れゆきを下支えしている。
(水柿武志)