
実は鰹の塩たたきには、もう1つ食べ方がある。高知県四万十市中村の「中村伝統の塩たたき」だ。高知市周辺では塩を振るだけのシンプルなものだが、中村では塩や酢、柑橘類を主体にしたタレでたたき、味をなじませ鰹を味わう。地元・中村商工会議所が作成したパンフレットによれば、約40の店舗で自慢の塩とタレを使った塩たたきが楽しめるそうだ。
中村の塩たたきは人気グルメ漫画「美味しんぼ」でも紹介され、一躍脚光を浴びた。その中村流の鰹の塩たたきの作り方はこうだ。
(1) 皮付きのまま炙(あぶ)った鰹(柵)を厚さ1センチほどに切る
(2) (1)に塩をふり、青じその千切り、刻んだワケギ、スライスした玉ねぎをたっぷりのせる
(3) 酢、日本酒、ゆず酢、みりん、しょう油(少量)を鍋に入れて煮きってタレを作る
(4) (2)に(3)のタレを冷ましてからかけて、手のひらでたたいてなじませる
(5) 余分なタレを流し、にんにくのスライスと青じその葉をのせたら出来上がり
バンバンとたたいたり、斜めに傾けて余分なタレを流したりする工程があるため、中村の塩たたきの名店「厨房わかまつ」では、そのまますぐ提供できるように皿の周囲に溝の掘ってある木製の板を使っている。自宅で実践するなら、完成まではまな板の上で作業し、最後に盛り付けるのが良さそうだ。ゆず酢がなければ、ゆず果汁やレモン果汁で代用してもいい。
たっぷりのタレにつかったままでマリネしながら食べる方法もある。これは時間の経過とともに鰹の身が引き締まり、食感に変化が出る。それもまた新たな味わいだろう。