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その名は「ニモ」 映画にちなんだ踊るクモの新種

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ナショナルジオグラフィック日本版

2020年11月の晴れた日、オーストラリア南オーストラリア州マウントガンビア近郊の湿地で、シェリル・ホリデー氏は足首まで水につかってしゃがみ込み、30センチほど先に咲く紫のランにカメラを向けた。ホリデー氏がシャッターを切ろうとした瞬間、フレームから小さな何かが飛び出すのが見えた。

その時はわからなかったが、ホリデー氏が見たのは新種のピーコックスパイダーだった。ピーコックスパイダーは、オーストラリアに生息するハエトリグモの仲間で、色鮮やかな体と複雑な求愛のダンスで知られる。

環境保護団体ネイチャー・グレネルグ・トラストのエコロジカルフィールドオフィサーで、市民科学者でもあるホリデー氏は「3~4年前からピーコックスパイダーを追い掛けていますが、(これまで見たクモとは)外見がかなり違っていました」と振り返る。腹部はくすんだ茶色で、顔にオレンジと白の特徴的な模様があった。

興味をそそられたホリデー氏がフェイスブックのピーコックスパイダー鑑賞ページで写真を共有したところ、ページの管理者であるクモ学者ジョセフ・シューバート氏の目に留まった。シューバート氏も見たことのないクモだった。

2人は連絡を取り合い、ホリデー氏が生きたクモを捕まえてメルボルンのシューバート氏に送った。そして、シューバート氏らがディズニー映画の主人公のクマノミにちなんで「Maratus nemo」(マラトゥス・ニモ)と正式に命名した(米ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニーは米ナショナル ジオグラフィックパートナーズの筆頭株主です)。

20年3月に学術誌「Evolutionary Systematics」で紹介されたニモは、発見ラッシュが続くピーコックスパイダーの最も新しい種だ。11年にはわずか15種だったピーコックスパイダーは、ニモの発見によって92種となった。

メルボルンにあるミュージアムズ・ビクトリアで生物学者として働くシューバート氏は、写真撮影が手軽なものになったことが新種発見ブームの背景にあると考えている。誰もがスマートフォンで写真を撮り、ソーシャルメディアですぐに公開できるようになった。

もちろん、このクモへの関心の高さ、人気も助けになっていることは間違いない。米粒大のクモが行う魅惑的な求愛のダンスは数え切れないほどネット上に広まり、ピーコックスパイダーはネット上で大評判なのだ。

魅惑的なダンス

とはいえ、ピーコックスパイダーを見つけるのは簡単ではない。ピーコックスパイダーは1年の大部分にわたって茶色で、春に脱皮したオスだけが目を引く色になる。加えて体が小さい。毒を持たないとはいえ、こうしたことから、このクモの研究は難しいのだ。

シューバート氏は、新種を同定する際、オスの体色と求愛のダンスに注目する。求愛のダンスは種ごとに異なり、体を曲げたり回転したりすることで、交尾に適した健康体であることをメスに示す。シューバート氏が求愛のダンスを確認するため、ニモのオスとメスを引き合わせたところ、意外な展開が待っていた。

この個体は「ほかの種と異なり、腹部を完全に持ち上げる」ことがなかったのだ。ピーコックスパイダーのカラフルな求愛行動を可能にする「ほかのピーコックスパイダーにある腹部フラップがなく、小さな茶色のお尻しかありません」とシューバート氏は説明する。

その代わり、オスはメスに好印象を与えるため、3番目の脚を上げ、腹部を地面に押し付けて震わせ、人にも聞こえる音を発生させた。これがニモ特有のダンスかどうかは「不明だ」とシューバート氏は話している。

シューバート氏によれば、ニモが湿地帯に暮らしていることも「とても不思議」だという。既知のピーコックスパイダーの大部分が乾燥した低木地帯を好むからだ。

ただし、シューバート氏はいつもピーコックスパイダーに驚かされている。20年には、塩湖に生息するマラトゥス・ボルペイ(Maratus volpei)という種が発見された。「ピーコックスパイダーを探すときは、もっと幅広い生息地を調べるべきだと学びました」

ピーコックスパイダーは昆虫の個体数をコントロールする捕食者として貴重な役割を果たしているが、生態系における役割や保全状況については、まだ知らないことばかりだとシューバート氏は補足する。

新種クモの発見が重要な理由

オーストラリア、クイーンズランド博物館でクモ学の主任学芸員と研究員を務めるマイケル・リックス氏は「ピーコックスパイダーの素晴らしいところは、クモは大きくて毛むくじゃらで危険だという一般的なイメージを覆したことです」と話す。リックス氏は今回の研究に参加していない。

「今回の発見は、オーストラリアのクモがどれほど面白く、多様で、まだ十分に研究されていないかを示す好例です」(リックス氏)

オーストラリアに生息する無脊椎動物のうち、正式に記録されているのは30%程度で、まだ同定されていないクモが約1万5000種いるとも言われている。

リックス氏によれば、新しいクモの発見が害虫のコントロールや治療法のヒントなど、人類に利益をもたらすこともあるという。ジョウゴグモの毒から抽出したタンパク質はすでに、鎮痛剤やてんかん、脳卒中の治療薬の開発に利用されており、一部のがんの治療につながる可能性も秘めている。

ただし、クモと昆虫の個体数は世界的に激減している。オーストラリアでも、生息地の喪失や山火事、殺虫剤によって、私たちが発見する前にクモが全滅してしまうかもしれないとリックス氏は警告する。

「基本的なことですが」と氏は言う。「その種が存在することを知らなければ、私たちが未来の世代のために生物多様性を保全することは不可能です」

(文 JUSTIN MENEGUZZI、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年4月24日付]

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