居眠りや不用意な離席をする受講者には注意喚起し、悪質な場合は単位を与えないこともある。「(受講)スタイルは自由ですが、受講時間内に運転に必要な規則や法律を学んでもらわなければ意味がない」と国領課長は手厳しい。

同教習所のオンライン学科の滑り出しは上々だ。同教習所の全受講生は現在、約2700人で、前年の同時期を約30%上回っている。受講生の総数は2月は約1800人だったが、オンライン学科の認知度が高まった3月には3000人近くまで膨らんだ。

「コロナ禍で受講生が減ってしまうことは覚悟していたのですが杞憂(きゆう)でした」と玉川さんは驚く。設備の投資費用や運営方法など新しい挑戦だったが「利用者の利便性の方が大きい」と判断した。今後は録画を使った24時間対応など、新たなサービスの導入も視野に入れているという。

講習の約8割を自宅で受けられるオンライン式は画期的だが、限界もある。実際に運転する技術は教習所に行かなければ身につけられない。ある教習所の関係者は「いまはコロナ禍で需要があるだけだ」と普及に懐疑的な見方をする。

都内には大小含め約50の自動車教習施設があるが、オンライン講習を採用しているのは、武蔵境自動車教習所などごくわずかだ。ただ、他の教習所にとってもオンライン教習は気になるようで「すでに同業4社が見学にきた」(玉川さん)という。

記者はペーパードライバー歴約20年。さび付いた交通ルールをすきま時間におさらいするには、オンライン講座はもってこいかもしれない。

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将来はAIが実技の先生に?

「左に少し寄りすぎです」「前方に視線を集中しましょう」。気を抜くと人の声が注意を促す。人工知能(AI)を使った教習車を運転する様子だ。福岡県で自動車教習所を運営するミナミホールディングスなどが開発した。

背景にあるのは深刻な指導員不足。自動車離れと言われながら、2020年に免許を取得した人は約118万人と前年より1万人ほど多い。20代の免許所有率も7割を超える。カーシェアなどが整備されたこともプラス要因だ。

急ブレーキなどAIには難しい動作もある。ただ「指導員の肉体的、精神的負担は大きく軽減する」(マーケティング部の糒大樹さん)といい、教習所の風景はこれからも変化しそうだ。

(佐々木聖)

[NIKKEIプラス1 2021年4月24日付]

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