自宅にいたまま講習を受けられる、オンライン式の自動車教習所が登場したと聞いた。新型コロナウイルス禍の影響もあって若者を中心に人気という。どんな仕組みなのか探ってみた。
交差点を左折する場合は――。武蔵境自動車教習所(東京都武蔵野市)の教室では、教官が免許取得に必要な交通ルールを丁寧に教えている。ただ、教室内の生徒はまばらで、コロナ禍の最中であることを考慮しても少ない印象だ。「こちらにも生徒さんがいますよ」。同所管理者の玉川勝さんの案内で別室に移る。
部屋には大型モニターが数台。複数の画面に受講中の人たちが映っている。生徒は教習所の教室で進行中の講習と全く同じものをリアルタイムで受講している。唯一の違いは、ウェブ会議システムの「Zoom(ズーム)」を使い、自宅など教習所以外の場所から参加していることだ。
受講は簡単で、講習の開始60分前までに教習所のウェブサイト上で事前登録する。開始まで10分を切ったら、事前登録の際に送られてきたメールに記載されたリンクから、Zoom会議に参加する。
画面内の受講生を見ると、寝間着に近いジャージー姿の若者も散見されるなど、教室で見るよりリラックスした格好が目立つ。「重要なのは(受講)態度で服装は関係ないですから」と玉川さんは笑う。
受講生の大半が大学生で、受講中のある学生は「コロナで大学に通う回数が減り、あまり外出しなくなったのでオンライン式に決めた」と話す。子育てで家から離れにくい主婦のほか、免許を取り損ねた社会人の利用も多い。
なぜオンライン講習が可能になったのだろうか。従来、運転免許を取得するには教習所に通い、交通に関するルールなどを30時間弱かけて学ぶ必要があった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、警察庁は2020年末、「3密」対策の1つとしてオンライン式の講習を認めた。
武蔵境自動車教習所の場合、オンラインでの受講が可能になったのは26時間のうち、救命技術などの実技を除いた21時間分だ。講習の見せ方には教習所内の映像をそのまま見るライブ配信と録画配信の2種類がある。同教習所は今年2月からライブ型のオンライン講習を始めた。
オンラインは交通費も不要だし、なによりも楽だ。ただ、講習中に違うことをしていても教習所側からは分からないのではないか。「居眠りなんか許しませんよ」と強調するのは経営企画部の国領諭史課長。オンライン学科は選任の担当者がモニターに映った受講者を常に監視している。