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ワクチンパスポート開発進む 予防効果、期待できるか

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ナショナルジオグラフィック日本版

世界各国で新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中、旅行したり施設に入場したりする際に「ワクチンパスポート」が使われ始めている。すでに導入されたイスラエルなどの現状を紹介しつつ、公衆衛生上の「通行手形」に求められる機能や課題について、専門家に聞いた。

◇   ◇   ◇

イスラエルのオーレン・ローゼンフェルド氏は2020年、ドキュメンタリー映画制作者として、新型コロナウイルス感染症に関する何十もの映像を撮影してきた。しかし、いざ自分がテルアビブでワクチンを接種するとなると、写真を撮り損ねてしまった。

「看護師さんの動きがかなり速かったので。ウソの写真を撮りたくなかったから、2回目の接種まで待ちました」

2回目の接種完了後、ローゼンフェルド氏はイスラエルの新型コロナウイルスワクチン接種証明書プログラム、「グリーンパス」へのアクセス権限を得た。ワクチン接種を受けた市民が、スポーツジムやレストラン、コンサート会場、映画館などに入場する際に要するものだ。

このパスには、紙の証明書と、店舗や施設がスキャンできるコード付きのスマートフォンアプリの2種類がある。グリーンパスの保有者のワクチン接種が確認され、入場が許可されれば、スキャン後に緑色のチェックが表示される。

イスラエルのワクチンパスポートは、この種のプログラムとしては世界で最も進んでいる。同国では成人の80%がワクチン接種を完了しており、このパスポートを得る資格を持っている。

欧州連合(EU)も今夏、同様の「デジタルグリーン証明書」の発行を予定している。ワクチン接種、新型コロナウイルス検査結果、新型コロナウイルス感染症からの回復状況などの情報を、スキャン可能なQRコードにまとめ、住民が飛行機に乗ったり、加盟国の国境を越えたりできるようにする。

米国では、ワクチン接種を受けたことを証明する唯一の手立ては、接種後に米疾病対策センター(CDC)から発行される紙のカードだ。カードには、ワクチンの種類、接種日、接種場所などの医療情報が記載されている。世界保健機関(WHO)が黄熱の予防接種証明書として発行するイエローカードと類似している。

しかし、一日も早く外国に渡航したい人にとって、このカードでは不十分かもしれない。アイスランドは3月、ワクチン接種済みの旅行者を受け入れるようになったが、当初はCDCのワクチン接種カードでは入国できなかった(現在は可)。CDCカードの偽物がネット上で販売されているとの報道もあり、再び外国旅行を楽しむためには、世界で信頼を得られる証明書を持つことが不可欠のようだ。

いかにして機能的なワクチンパスポートを作成するか。また、パスポート内の個人情報をどのように保存し、共有し、保護するか。世界中の開発者が、目下そうした課題に取り組んでいる。

実際にはどんなもの?

世界中の国々が、できる限り安全に、経済を開放し、人々が自宅や地元を離れられるようにする方法を模索している。そこで導入を検討されているのが、新型コロナウイルスに関連するその人の状況を証明できるワクチンパスポートだ。

こうしたワクチン証明書がどのような形を取ることになるかはまだわからないが、デジタルアプリをワクチン接種記録と連携させ、国境や航空会社のチェックインカウンターで提示するためのツールがデジタルワクチンパスポートだ。データソースやデータの保存方法、表示内容などは、アプリを提供する組織や企業によって異なる。現在、多くのデジタルアプリが開発されているところだ。

 一方で、スマートフォンを持っていない人でも利用できるように、多くの場合はバーコードやQRコード付きの紙という選択肢も用意されている。紙の上にQRコードを表示するというシンプルな技術でも、世界を再び開くためのパスポートとして機能するかもしれない。

世界で使える標準化が必要

米国では様々な組織が、紙の書類をベースに、安全で公平な、かつプライバシーが守られる方法での接種記録のデジタル化を試みている。米ワシントン・ポスト紙が入手したバイデン政権の資料からは、少なくとも17種類のワクチンパスポートが米国内で開発されていることがわかる。

気が遠くなるような挑戦だ。多くの国はここしばらく、旅行者の入国にあたって新型コロナウイルスの陰性証明を提示するよう求めている。現在のところ、検査結果の証明は、ワクチン接種を証明するより簡単だ。旅行者は検査機関からの書類や電子メールを提示すればよい。それでも、時には審査する側が知らない言語で記述されている場合もある。標準的なフォーマットがないせいで、混乱が生じてきた。

「シンプルであるべきです」と言うのは、米マサチューセッツ工科大学の准教授で、ワクチンパスポートを有志で開発している団体「パスチェック・ファウンデーション(PathCheck Foundation)」の創設者でもある、ラメシュ・ラスカー氏だ。「CDCのワクチンカードよりもプライバシーを侵すものであったり、複雑であったりしてはなりません」

パスチェックのワクチンパスポートは、認証されたワクチン接種記録をQRコードに結びつけ、情報を必要とするあらゆる施設や入国管理局でスキャンできるようにする。データは改ざんされないように保存され、オフラインでも利用できる。また、インターネットがない環境でも使えるように、ワクチン提供者が紙を使って情報を配布することもできる。

確実に求められているのは、世界中の国で、また複数の言語で利用できるようにするデータの標準化だ。IBMのワクチンパスポートプロジェクトリーダーであるエリック・ピシーニ氏は、標準化の一例として、複数の種類のクレジットカード(すべてバックエンド技術が少しずつ異なる)を読み取れるカードリーダーを挙げる。

「誰もが信頼できる一連の標準規格が必要です」と同氏は言う。「3つの国を旅行するのに、3つのアプリを用意しなければならないのでは困ります」

IBMのワクチンパスポート技術は、米ニューヨーク州のワクチンパスポート「エクセルシオール・パス(Excelsior Pass)」に搭載されており、現在、一部のスポーツ会場やアリーナでテストが行われている。テストに参加中のニューヨーク市民は、特殊なコードが書かれたアプリを見せ、各施設は別のアプリでそれをスキャンする。このコードには、その人のワクチン接種状況や最近の新型コロナウイルス検査結果などの情報が保存されている。問題がなければ、緑色のチェックマークが表示される(今のところ、このパスの使用は任意だ)。

「コモンパス(CommonPass)」という名のワクチンパスポート技術も開発中だ。「コモンズ・プロジェクト・ファウンデーション(The Commons Project Foundation)」の最高経営責任者であるポール・マイヤー氏によると、地域や言語を越えてどのような基準が採用されても、新型コロナウイルス検査結果やワクチン接種記録を証明することができるという。現在、オランダ領の島アルバで陰性証明のために使われている。また、日本航空とカンタス航空がアプリの実証実験を行っているところだ。

ワクチンパスポートは、旅行のためではなく、公衆衛生の観点から設計されるべきだとマイヤー氏は言う。「これは健康の問題であり、私たちが解決しなければならない医療問題です。正しく行えば、旅行の世界も恩恵を受けることができます」

プライバシーと公平性の確保を

様々なデジタルワクチンパスポートが開発される中、全米市民自由連合(ACLU)は、人々の自由やプライバシーが危険にさらされる可能性があると警告した。こうした懸念や、他の政治的な思惑から、ワクチンパスポートの使用を禁止した州もある。フロリダ州とテキサス州ではワクチンパスポートを違法とする法案が可決されたほか、施設などへの入場に際し、いかなるタイプのワクチン証明書も義務づけないと述べる州知事も出ている。

このような懸念は、他の国でも生じている。英ロンドン在住の技術研究者であるステファニー・ヘアー氏は、政府が最近発表した「新型コロナ状況認証」プログラムに深い懸念を抱いている。

ワクチンはまだすべての人に提供されているわけではないので、このプログラムは、ワクチンを希望しながらもまだ接種していない人を罰することになりかねない。また、個人宅に集まっている人には何の効果もない。さらに同氏は、英国がパンデミックの初期にリリースした新型コロナ追跡アプリについて、感染者と接触した可能性があるユーザーへの通知がきちんとできていなかった例を指摘する。

感染率をどの程度、あるいはどれだけ早く下げられるのかを含め、ワクチンパスポートがパンデミックにどのような好影響を与えるのかという点にこそ、時間と労力をかけるべきであるとヘアー氏は言う。

「技術で解決できれば、それはとてもうれしいです」と同氏は語る。「しかし、それが有効だとは思えないのです。(感染率の)数値が下がらないのであれば、なぜワクチンパスポートを使うのでしょう。おとぎ話のようなことはやめませんか」

ワクチンパスポートが2021年、どのように展開していくかにかかわらず、新型コロナウイルス感染症についての理解が深まるとともに、モニタリングしながら変更を加えていく必要があると、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院教授、ハワード・コー氏は言う(編注:厚生労働省も、ワクチンの感染予防効果はまだ不明のため接種後も感染予防対策を継続するよう促しています)。

コー氏は、バラク・オバマ元大統領の下で、米国保健福祉省の保健担当次官補を務めた。2010年にエイズウイウス(HIV)陽性の外国人の米国入国禁止措置が解除されたときも、同省に在籍した。

この入国禁止措置は、HIV感染症がよく理解されていなかった1987年に開始され、恐れと偏見のために長く続いていた。コー氏は、同措置の解除後に米国で開催された最初のエイズ会議に登壇した。こうした体験が、ワクチンパスポートについての考え方に影響したという。パスポートは、世界を開くものから、人々を締め出すものに早変わりする可能性があるのだ。

「公平性や公正性といった概念を保持し、差別につながりうるツールとして使用しないようにしなければなりません」

とはいえ、導入後の効果を把握しないことには、ワクチンパスポートの目標を設定することは不可能だとコー氏は言う。それまでは、また、ワクチンや変異ウイルスについての理解が深まるまでは、ワクチンパスポートの将来は不透明なままかもしれない。

「パスポートがどのような役割を果たすか、はっきりしません」と同氏は言う。「慎重に進めていく必要があります」

(文 JACKIE SNOW、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2021年4月20日付の記事を再構成]

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