「起業家よりも『社会起業家』でありたい」と語る本間さん

まだ課題は多いが、ビジネスが軌道にのれば、ネパールでの生産も諦めていない。モアイング副代表で東京理科大学大学院1年生の、渡邊聖さん(24)は本間さんについて、「高校生のときの友人の死を常に意識しているのが分かる。だから彼女の話からは、いつも『人の命を助けたい』という情熱が伝わってくる」と語る。

本間さんらのビジョンは、ミドリムシを使った健康食品などを手掛け、東大発ベンチャーから上場企業へ成長したユーグレナに重なる。だが、重視するのは上場や売上高といった事業の規模感よりも、社会に与えるインパクト(影響)の大きさ。本間さんは「起業家ではなく『社会起業家』であることにこだわりたい」という。ネパールでの再チャレンジにこだわるのも「ビジネスではよく『ターゲットを考えろ』と言われるけれど、私はプレーヤーの生活も改善させたい」という考えからだ。

ソーシャルビジネスで先行する英国へ留学予定

4月からはソーシャルビジネスを本格的に学ぶために、慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科に進学した。東京理科大卒業時のSNS投稿で本間さんはこうつづった。

「『学畜』と称される理科大生の中でも、課外活動を存分にさせていただけるありがたい環境に私はいました」

この言葉からも起業と学業の両立はいかに大変だったかが想像できる。ハルトプライズの準備と試験期間が重なった際には徹夜を重ねた。ほぼ毎週あったリポート提出も思い出の1つで、時間がないあまり「電車の中でリポートのホチキス止めをしていました」と笑う。

大学院では、衛星データを使った途上国の栄養状況の把握に向けた研究を始めている。途上国では人の移動などのデータ取得が難しく、例えば水害などで収穫物が足りずに栄養失調が起きていても把握が難しい。衛星データを使って栄養失調につながるリスクが高い地域を洗い出せれば、より正確な栄養状況がわかるはずだと考えている。

さらに9月からは、ソーシャルビジネスで先行している英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスへ1年間の留学を予定している。モアイングの事業がソーシャルビジネスの「木」とすると、イギリス留学は「森を見るため」。日本よりもソーシャルビジネスの勃興が早かった欧州で学ぶことで「最新の情報や新しい視点を得たい」と話す。

モアイングの経営も、日本にいる渡邊さんと連携してイギリスからリモートで続ける予定だ。モアイングは「自分の思いをそのまま反映させているので、ずっと関わっていきたい」と話す。22歳の社会起業家は、「命を助ける」使命を胸に世界へ飛び出していく。

(ライター 菊池友美)

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