初めて耳にする「ソーシャルビジネス」という概念、そして同時期にたまたま出合ったモリンガ。生息分布をみると栄養失調問題を抱える国・地域と重なる。モリンガの認知度が高まり、販売に回せない余分な葉などを現地の人たちが食べる習慣がつけば、途上国の栄養状態を改善できるかもしれない――。

東京理科大の友人らと団体「モアイング」を立ち上げ、2019年の4月にベトナムで開催されたハルトプライズの世界地域予選への出場を果たす。予選とはいえ、約20万組の応募の中から、約1%しか通過できない激戦だ。世界大会への出場は逃したが、ベトナムでの世界地域予選ではトップ9に入る結果を残した。

カースト制度の壁でリスタート

ハルトプライズの世界地域予選前には、クラウドファンディングで集めた資金でネパールにも足を運んだ。わずか3泊5日の短い現地調査だったが、ネパールでは生まれて初めて、途上国の栄養状況を自分の目で見て、栄養失調の根本的な課題は、現地の人たちが栄養について知らないことだと気付いた。

「ネパールで栄養について質問しても、栄養という概念そのものになじみがない人がたくさんいた。モリンガの葉について聞いても、そんなものは食べない、と言われた」

本間さんが掲げる理想のビジネスモデルはこうだ。まず、モアイングが日本市場でモリンガを使った食品を販売し、十分な量のモリンガを買い取れる体制を構築することで、現地の人に「モリンガを育てればもうかる」と知ってもらう。育てやすい農作物であるモリンガは、途上国の農家がすでに持つ土地や農業スキルを生かせる。モリンガ農家が増えれば、余った葉や少し悪くなった部分を農家が消費する習慣が広がる。現地の食生活の中にモリンガが入り、栄養状況が改善していくはず。目指すのは、現地の生産者と買い手の両方がウィンウィンの関係でいられる、持続可能なビジネスだ。

近隣の大国、インドでもモリンガは栽培されており、多少の流通もあるが、なぜネパールだったのか。「(インドは)特に農村部ではカースト文化がまだ残っているのでは」との懸念がその理由だ。それにネパールでは「日本に対して友好的な印象を持つ人が多かった」という。

19年3月、ネパールでモリンガクッキーのプロトタイプを試食してもらいながら市場調査した=本間さん提供

しかし、いざ生産体制を構築しようと準備を始めると、多くの障壁があった。英語が通じず、常時通訳に頼らざるを得なかったほか、現地でビジネスを始めるには一定数以上のネパール人従業員が必要であることなどもわかった。

そして言語や法制度よりも「ずっと高い壁だった」のは、インドで懸念していたカースト文化がネパールにも根強く残っていたことだ。カースト下位の人が作った食べ物をカースト上位の人が食べられなかったり、神聖な場所とされているキッチンに外国人が入れなかったり、様々な制約があった。「自分たちのビジョンをかなえるためにはもっと深い交流が必要。でも、費用も時間もかかる」と本間さん。ネパールでの生産を一旦、断念せざるをえなかった。

プレーヤーの生活改善もセットで

そこで日本人経営者の多いカンボジアに目を移し、モリンガの生産・流通体制の構築を始めた。現地で食用コオロギ事業を営むECOLOGGIE(エコロギー)の葦苅晟矢(あしかり・せいや)代表や、プノンペンの障害者が働く工房などの協力を得て、今年1月にはカンボジア産のモリンガを使ったクッキーなどの試作商品を日本市場向けに自社の電子商取引(EC)サイトでテスト販売した。商品への反響は徐々にふくらみ、3月に始めた2回目のテスト販売ではモリンガ入りクッキー(8枚入り680円)が発売1週間で100袋ほど売れた。

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