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「ワキ汗」じつは治療法あり 副作用少ない新薬も登場

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NIKKEI STYLE

日経ヘルス

暑くもないのにワキ汗がにじむ。汗じみで淡い色の洋服が着られない…。そんなワキの多汗症患者の多くが、医療機関にかかっていないという。かかっても、これまでは専門の保険適用医薬品がなく、主に使われてきた院内調剤の制汗剤(塩化アルミニウム外用薬)は皮膚炎を起こしやすいなど、副作用が課題だった。しかし昨年11月、初の保険適用薬としてソフピロニウム(商品名:エクロック)外用薬が発売された。これから暖かくなり症状が悪化しやすい季節になる前に医療機関に相談したい。

大量のワキ汗の悩み、あきらめていた人が9割以上

厚いアウターを脱ぎ捨て、軽やかなファッションを楽しめる季節が近づいてきた。しかし、なかには大量の「ワキ汗」が原因で、気温の上昇とともに気が重くなる人もいるだろう。汗ジミが目立たない衣服しか着られなかったり、したたり落ちる汗で1日に何回も着替える必要があるなど、1年のうち何カ月も汗に悩まされる人は、実は少なくない。

汗は体温を調節したり肌の湿度を保つために皮膚の汗腺の一つ、エクリン腺から分泌される。そして、汗が増えてしまう病気(神経疾患やがんなど)がないのにエクリン腺の働きが高まって「一般的な汗かき以上」の汗をかいてしまう病気が「原発性多汗症」だ。原発性多汗症には、全身に汗をかく「全身性多汗症」と、手のひら、足の裏、顔面など局所にかく「局所多汗症」があり、後者の一つがワキの下に汗をかく「腋窩(えきか)多汗症」だ。

図1 こんな症状は腋窩多汗症では?

東京医科歯科大学大学院皮膚科学分野の横関博雄教授は「腋窩多汗症は18人に1人の割合(5.7%)で見られるありふれた病気の一つ。男女比は6対4でやや男性に多い。気温が高くなっても(温熱性)、緊張しても(精神性)、汗の量が増え、患者のQOL(生活の質)を大きく低下させるやっかいな病気です」と解説する。

しかし、これまでは患者自身が治療法の存在を知らなかったり、かかりつけ医に相談しても「体質のせいだから治療しなくてもいい」と言われることも多かったという。横関教授らが多汗症と診断した患者にアンケート調査を行ったところ、9割以上の人が長い間、何も治療を受けていなかったという結果が得られたという。

副作用などの課題があった従来の治療薬

しかし今、多汗症の治療に積極的に取り組む医療機関が増えている。2010年に「原発性局所多汗症診療ガイドライン」(15年に改訂)が作られ、診断基準や効果が科学的に認められた治療法が示されたからだ。さらに昨年11月には腋窩多汗症のための塗り薬として新たに「エクロックゲル5%」(成分:ソフピロニウム臭化物)が発売された。

ワキの多汗症に悩む患者にとっては、新しい薬の登場により「治療の武器」が増えたといえる。では、大量のワキ汗を止める治療にはどんなものがあるのだろうか。

一つは、エクリン腺から汗が出る穴(汗孔)を塞いでしまう治療だ。従来からある方法は塩化アルミニウムという成分を含んだ制汗剤を毎日塗布する。塩化アルミニウムは汗の成分と結びつくことで固まりを作り、汗の通り道を塞いでしまう。患者の半分で症状をコントロールできるが、刺激があり、多くの人が皮膚の副作用(皮膚炎、紅斑、かゆみ、湿疹など)を起こすため、ステロイド外用薬を併用することも多かった。また、保険で治療のできる医薬品としては発売されておらず、薬局で調剤してもらう必要がある(薬局製造販売医薬品)。そのため近隣の薬局で対応できない場合があるという課題もあった。

もう一つの対策は、汗を調節している神経の機能を抑制すること。汗は交感神経から放出されるアセチルコリンという物質が、エクリン腺のM3(ムスカリン受容体サブタイプ3)という場所に結合することで分泌される。そこでアセチルコリンの働きを抑制する抗コリン薬や自律神経調整薬(トフィソパムなど)を内服したり、ワキの下の皮膚に局所での末梢神経(交感神経)からアセチルコリンの分泌を阻害するA型ボツリヌス毒素を注射するボツリヌス療法がある。ボツリヌス療法は制汗剤で十分な効果の得られない人に行う治療で9割の人に効果がある。ただ、治療費の負担が大きいうえに、効果が半年から1年ほどで弱まるため治療を繰り返す必要がある。

図2 腋窩多汗症の主な治療

第1選択薬として使える医薬品として「エクロック」登場

これまでの診療ガイドラインでは、腋窩多汗症で最初に行うべき治療(第1選択薬)は制汗剤(塩化アルミニウム外用薬)治療で、その効果が得られなかった場合に行う(第2選択薬)のがボツリヌス療法だ。そこに患者の様子を見ながら抗コリン薬や自律神経調整薬などを補助治療として行う。

新たに発売された「エクロック」は制汗剤と同様、第1選択薬として使われる塗り薬だが、作用のメカニズムは塩化アルミニウムとは異なる。横関教授は「成分のソフピロニウムはエクリン腺のM3に結合しアセチルコリンが結合するのを妨げることで抗コリン作用が現れる成分。特徴は、皮膚から吸収されると体内で速やかに代謝されて作用がなくなること。つまり、皮膚のエクリン腺だけに作用する抗コリン薬といえる」と解説する。そのため内服の抗コリン薬に見られる「口渇」(口の渇き)、「散瞳」(光をまぶしく感じる)などの副作用が少ない上、塩化アルミニウム外用薬でほとんどの人に見られた皮膚の副作用もより軽度で、頻度も5%前後と少ないなどのメリットがある。

図3 「エクロック」で発汗を抑えるメカニズム

臨床試験での効果も次の通り。多汗症の重症度は以下の4段階で示されるが、重症度が3段階以上(いつも日常生活に支障がある)の患者や汗の量が非常に多い人に「エクロック」を1日1回、6週間塗布したところ、半数以上の人で重症度が2以下(日常生活に全く支障がないか、時々支障がある)に低下したり汗の量が半分以下になったりした。

<HDSSによる自覚症状分類>

1:発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
2:発汗はがまんできるが、日常生活に時々支障がある
3:発汗はほとんどがまんできず、日常生活に頻繁に支障がある
4:発汗はがまんできず、日常生活に常に支障がある

※HDSSは「Hyperhidrosis disease severity scale」の略で、多汗症重症度スケールのこと

また、「エクロック」の利点として、保険で処方される医薬品なのでほとんどの医療機関で治療できることも挙げられる。横関教授は「皮膚科に限らず内科など、普段通っているかかりつけ医にも相談できるので、患者さんにとってはより治療を受けやすくなる」と期待する。

「エクロック」は入浴後に塗布するのが基本

「エクロック」はゲル状の薬剤で、専用の容器に入って処方される。薬剤は手で塗らず、付属の塗布具(アプリケーター)に乗せてワキの下に塗る。横関教授は、塗布具を用いる理由について、「薬剤のついた手で無意識のうちに目を触ると、散瞳や緑内障の悪化など副作用を起こす可能性があるため」と説明する。

使用は1日1回。入浴後に汗などをよく拭いてから塗る。多汗症の汗は夜寝ている間は止まるため就寝前だとより吸収されやすいと考えられるが、皮膚から速やかに吸収されるため朝入浴する習慣がある人は朝でもよいという。

治療効果を高めるためには生活改善も重要だ。横関教授は「基本的には体を締めつける衣服は避け、化繊の衣類より汗を吸収しやすい衣服を選びたい。水分をとりすぎるとたくさん汗をかくので、熱中症などに注意しながら適度な水分摂取を心がけてほしい」とアドバイスする。

なお、「エクロック」の薬価は1本20gで4874円。3割負担で1462円になる。20gは2週間分なので1カ月当たり約3000円となる。薬局で調剤される制汗剤(20%塩化アルミニウム外用薬)に比べれば費用負担は大きいが、副作用の少ない治療が全国の医療機関で行えるようになれば患者のメリットは大きいだろう。

抗コリン薬の新薬など今後も増える治療の選択肢

ワキの多汗症に悩む人のなかには、これまで適切な治療法に出合えず、つらい思いをしてきた人も多いだろう。しかし、治療のための"武器"が増えたことで、医師はより患者に合った治療の戦略を練ることができるようになるという。横関教授は「塩化アルミニウムとエクロックは作用のメカニズムが異なる。塩化アルミニウムがすべてエクロックに置き換わるのではなく、今後は効果的な併用療法など研究が進むことも期待できる」と話す。

塗り薬で十分な効果が得られなかった場合も内服薬や、ボツリヌス療法を併用することができる。ボツリヌス療法は次第に効果が弱まるという欠点はあるが「5月頃にボツリヌス療法を行うことで症状が厳しくなる夏の間を乗り切るといった治療もできる」(横関教授)という。また、患者によっては飲み薬を併用することでQOLを高めることもできる。

それで十分な効果が得られない場合や、エクリン腺ではなく皮膚のアポクリン腺が原因となっている「わきが」もある患者の場合は、2つの汗腺を電磁波で焼いて消失させる「ミラドライ」という治療法(保険適用外)もある。従来の手術治療と比較して治療後に傷跡が残らないというメリットがあるという。

さらに横関教授は「新たな塗り薬の抗コリン薬も開発中だ。今後、医師は治療法を組み合わせることで、患者のニーズに合った治療を提供できるようになると期待できる。腋窩多汗症で悩んでいる人は、あきらめずに医師に相談してほしい」と話している。

(図版制作 増田真一〔図1と2〕、三弓素青〔図3〕)

[日経ヘルス2021年4月号記事を再構成]※情報は掲載時点のものです

横関博雄さん
東京医科歯科大学大学院皮膚科学分野 教授。1980年徳島大学医学部卒業。86年大阪大学大学院修了。医学博士。93年東京医科歯科大学医学部皮膚科講師、2005年東京医科歯科大学医学部皮膚科の教授に就任。専門は免疫アレルギー、膠原病、発汗異常症など。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医。日本発汗学会前理事長。

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