日経ヘルス

「エクロック」は入浴後に塗布するのが基本

「エクロック」はゲル状の薬剤で、専用の容器に入って処方される。薬剤は手で塗らず、付属の塗布具(アプリケーター)に乗せてワキの下に塗る。横関教授は、塗布具を用いる理由について、「薬剤のついた手で無意識のうちに目を触ると、散瞳や緑内障の悪化など副作用を起こす可能性があるため」と説明する。

使用は1日1回。入浴後に汗などをよく拭いてから塗る。多汗症の汗は夜寝ている間は止まるため就寝前だとより吸収されやすいと考えられるが、皮膚から速やかに吸収されるため朝入浴する習慣がある人は朝でもよいという。

治療効果を高めるためには生活改善も重要だ。横関教授は「基本的には体を締めつける衣服は避け、化繊の衣類より汗を吸収しやすい衣服を選びたい。水分をとりすぎるとたくさん汗をかくので、熱中症などに注意しながら適度な水分摂取を心がけてほしい」とアドバイスする。

なお、「エクロック」の薬価は1本20gで4874円。3割負担で1462円になる。20gは2週間分なので1カ月当たり約3000円となる。薬局で調剤される制汗剤(20%塩化アルミニウム外用薬)に比べれば費用負担は大きいが、副作用の少ない治療が全国の医療機関で行えるようになれば患者のメリットは大きいだろう。

抗コリン薬の新薬など今後も増える治療の選択肢

ワキの多汗症に悩む人のなかには、これまで適切な治療法に出合えず、つらい思いをしてきた人も多いだろう。しかし、治療のための“武器”が増えたことで、医師はより患者に合った治療の戦略を練ることができるようになるという。横関教授は「塩化アルミニウムとエクロックは作用のメカニズムが異なる。塩化アルミニウムがすべてエクロックに置き換わるのではなく、今後は効果的な併用療法など研究が進むことも期待できる」と話す。

塗り薬で十分な効果が得られなかった場合も内服薬や、ボツリヌス療法を併用することができる。ボツリヌス療法は次第に効果が弱まるという欠点はあるが「5月頃にボツリヌス療法を行うことで症状が厳しくなる夏の間を乗り切るといった治療もできる」(横関教授)という。また、患者によっては飲み薬を併用することでQOLを高めることもできる。

それで十分な効果が得られない場合や、エクリン腺ではなく皮膚のアポクリン腺が原因となっている「わきが」もある患者の場合は、2つの汗腺を電磁波で焼いて消失させる「ミラドライ」という治療法(保険適用外)もある。従来の手術治療と比較して治療後に傷跡が残らないというメリットがあるという。

さらに横関教授は「新たな塗り薬の抗コリン薬も開発中だ。今後、医師は治療法を組み合わせることで、患者のニーズに合った治療を提供できるようになると期待できる。腋窩多汗症で悩んでいる人は、あきらめずに医師に相談してほしい」と話している。

(図版制作 増田真一〔図1と2〕、三弓素青〔図3〕)

[日経ヘルス2021年4月号記事を再構成]※情報は掲載時点のものです

横関博雄さん
東京医科歯科大学大学院皮膚科学分野 教授。1980年徳島大学医学部卒業。86年大阪大学大学院修了。医学博士。93年東京医科歯科大学医学部皮膚科講師、2005年東京医科歯科大学医学部皮膚科の教授に就任。専門は免疫アレルギー、膠原病、発汗異常症など。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医。日本発汗学会前理事長。

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