高価なイスにしたけど… 座りっぱなしはなぜ疲れる?

日経Gooday

人間工学に基づいた高価なイスでも、座りっぱなしで仕事を続けると、体が疲れてしまう。写真はイメージ (c)Marcin Balcerzak-123RF
人間工学に基づいた高価なイスでも、座りっぱなしで仕事を続けると、体が疲れてしまう。写真はイメージ (c)Marcin Balcerzak-123RF
日経Gooday(グッデイ)

カラダについてのお悩み、ありませんか? 体調がいまいちよくない、運動で病気を予防したい、スポーツのパフォーマンスを上げたい…。そんなお悩みを、フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんが解決します! 今回は、テレワークがメインとなり、高価な良いイスを買ったのに、体が疲れるようになったという人のお悩みに答えます。

今月のお悩み
「人間工学に基づいた高価なイス」を買ったのに…

40代、男性、会社員です。

昨年から仕事がテレワークがメインに切り替わり、会社に行くのは週に1日ぐらいになりました。

毎日の通勤がなくなったので、その点ではストレスがなくなったのですが、1日中、家で座りっぱなしの生活になったので、腰や背中が張るようになりました。

このままではよくないと思い、思い切って高額の「人間工学に基づいて設計された」イスを購入。さすがに快適で、長時間座り続けても、腰や背中はラクになりました。

ところが、毎日、仕事の終わりごろには、ずっしりとした疲労感を覚えるようになりました。なんだか体が疲れやすくなっているような気がします。

特に運動などで体を動かしているわけではなく、ただ座っているだけなのに、なぜでしょうか?

「座りっぱなし」だからこそ体が疲れやすくなる

体が疲れやすくなったのは、ズバリ、体を動かさずに座りっぱなしの時間が長くなっているからでしょう。

テレワークで通勤がなくなることはうれしいことかもしれませんが、通勤のために歩いたり、階段を上ったりすることは、体にとっては運動になっていました。それがなくなると、運動習慣がない人は、どんどん運動不足になってしまいます。

運動などで体を動かすことで、人間は筋力を維持することができます。しかし、体を動かさず、じっとしている時間が長くなると、筋力はどんどん衰えていきます。そして、筋力が衰えた状態で体を支えようとすると、疲労を感じやすくなります。

実は、ずっと座りっぱなしで仕事をしているよりも、ときどき仕事を中断して少し歩いたり、立って仕事をしたりする時間を作ったりするほうが疲労を感じにくいという研究結果があります。

「いや、座りっぱなしのほうが疲れないんじゃないの?」と思うかもしれませんが、これは本当です。

BMI[注1]が25以上の肥満である19人を対象にした実験で、ずっと座りっぱなしの場合と、30分ごとに3分の軽いウオーキングを行う場合とで疲労度を調べたところ、4時間後および7時間後では、いずれも軽いウオーキングを取り入れた場合のほうが疲労が軽かったという結果になりました[注2]

座りっぱなしと30分ごとに軽いウオーキングを行ったときの疲労度の違い

出典:BMJ Open. 2016;6(2):e009630.

また、オフィスの環境で、1日8時間座った姿勢で過ごす群と、電動式の高さ調節デスクを使って30分おきに座ったり立ったりした状態で仕事をする群とで疲労度を調べた実験では、やはり座りっぱなしのほうが疲れていたという結果になりました[注3]。これは、BMIが25以上の肥満の23人を対象にした研究です。

なお、集中力の点では、座り続けた群のほうが高かったものの、全体の仕事の生産性については、座ったり立ったりを繰り返した群のほうが高かったそうです。

[注1]BMI(体格指数)は、体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}で計算する。

[注2]BMJ Open. 2016;6(2):e009630.

[注3]Occup Environ Med. 2014 Nov;71(11):765-71.

体を動かしたほうが血流が増加して疲れが取れる

なぜ、座りっぱなしのほうが疲れを感じやすく、立ったり歩いたりもするほうが疲れにくいのでしょうか。

はっきりとした理由は分かりませんが、座りっぱなしを中断して立ったり歩いたりすることが心理的にも気分転換になったり、短い時間でも歩くことが自律神経のバランスを整えたりする効果があるのではないか、といった可能性が考えられます。

ほかにも、立ったり歩いたりすることで、血流が増加することもプラスに働くでしょう。

血液は、心臓から押し出されたあと、脚の静脈を通るときに重力に逆らって進まなければなりません。そのため、脚の静脈の周辺にある筋肉が収縮・弛緩を繰り返すことで血管を圧迫し、血液を押し出す“ポンプ作用”が必要になります。

座りっぱなしだと、脚の筋肉が動かないので、ポンプが働きにくく、脚に血液などの体液がたまりがちになります。つまり、脚がむくみやすくなります。一方、立ったり座ったりを繰り返したり、歩いたりすることで、脚の筋肉がギュッギュッと血液を押し出してくれるのです。

こうして血流が増加すると、たまっていた疲労物質が流れ出ていくので、スッキリします。逆に、血流が少ない状態だと、疲労物質がたまりやすく、疲れがとれにくいのかもしれません。

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