
しかし、試作は失敗の連続だったそうだ。空気の抜き方が強すぎてケーキが膨らみすぎ、缶が破裂したこともあった。それだけでなく加熱温度や加熱時間、ベーキングパウダーなどの材料の配合次第で、ケーキが膨らんだり、膨らまなかったりする。それら複数の条件を幾通りも組み合わせ、1年以上も試作を繰り返した結果、ようやく満足のいくケーキが出来上がった。
ところで、わざわざ紙カップを使ったのには訳がある。汚れたままの手でも、紙カップをつかんで食べれば衛生上問題ないからだ。被災した時の状況をしっかり想定した設計なのだ。
味はメープル風味、チョコ風味、フルーツMIXの3種類。メープル風味はメープルシロップの甘い香りが素晴らしく、それでいて甘さはクドくない。チョコ風味はラム酒が入っているので、開けた瞬間にラム酒の上品な香りが広がる。フルーツMIXは細かくカットした5種のドライフルーツ(パイナップル、パパイア、マンゴー、ココナツ、メロン)が入っており、そのこりこりした食感とふわふわケーキとの対比がいい。

「どこでもスイーツ缶」には、カップケーキのほかにチーズケーキ、抹茶チーズケーキ、ガトーショコラがある。カップケーキと同様、密封した缶内で、生の生地から焼いて造られている。
チーズケーキはオーストラリア産のクリームチーズを使っており、中心部がややレア風味で、周辺部分は香ばしいきつね色。缶内で焼いたからこそできる芸当だ。抹茶チーズケーキは、鮮やかな色と甘みを持つ西尾抹茶を使っている。ガトーショコラはチョコレートの風味が強く、こっくりした舌触りで濃密そのもの。どれも、普段から食べたくなるクオリティーであります。

世界のスイーツも缶詰になっている。今年日本で発売された、ドイツのサクランボケーキ「キルシュクーヘン」がそう。直径約10センチ、高さ約6.5センチとサイズは大きいが、重量は180グラムと軽量。プラスチックのフタが付属しており、その下には粉砂糖が付いている。
キルシュクーヘンは、ドイツ南西部のバーデン=ビュルテンベルク州の名物だそうな。ココア風味のスポンジケーキに、サクランボの蒸留酒が利かせてあり、サクランボのコンポート(砂糖煮)も入っている。