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スイーツ缶、ここまで進化 チーズケーキやドイツ菓子

黒川博士の百聞は一缶にしかず(2)

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NIKKEI STYLE

みなさん、缶(かん)にちは! 缶詰博士の黒川勇人です。今回は本格的なスイーツの缶詰を紹介しますぞ。

今やコンビニでも本格スイーツが買える時代ですけど、缶詰にもしっとりチーズケーキやふわっふわのスポンジケーキが登場してきた。どれも製法に工夫があっておいしく、缶から出てきたとは思えない出来栄えなのだ。

その先駆けとなったのは、トーヨーフーズ(東京・千代田)が2014年に発売した「どこでもスイーツ缶」シリーズ。17年には「カップケーキ」シリーズも発売した。

なぜスイーツを缶詰にする必要があるのか? それには東日本大震災が関係している。

開発のきっかけはこうだ。トーヨーフーズの社員が東日本大震災の被災者から話を聞く機会があったのだが、様々な話が出た中で、最も印象に残ったのは「長引く避難生活の中で、一度でいいからスイーツが食べたかった」という言葉だったそうだ。

食料の支援はあっても嗜好品は含まれない。しかし精神的にも辛い生活が続く中で、もし甘くておいしい物が食べられたら、どれだけ心が落ち着くことだろう。そこで同社の開発部は、本格スイーツ缶の開発を決意した。缶詰なら長期保存できるから、災害用の備蓄食になるはずだ。

「どこでもスイーツ缶カップケーキ」は、缶の中に耐熱性の紙カップを入れ、生のケーキ生地を一つひとつ注入して造られる。すべて重量をそろえなくてはならないので、手間の掛かる作業だ。そのあと缶内の空気を抜き、真空に近い状態でフタをして密封。大きな釜に入れて缶ごと高温加熱する。その熱で生地に含まれるベーキングパウダーなどが膨らみ、ケーキが焼き上がるというわけ。

空気の抜き方がポイントの一つで、通常の缶詰よりも強く空気を抜く「高真空缶詰」という特殊技術を応用している。僕の知る限り、この製法で焼き上げたスイーツ缶はほかに見たことがない。

しかし、試作は失敗の連続だったそうだ。空気の抜き方が強すぎてケーキが膨らみすぎ、缶が破裂したこともあった。それだけでなく加熱温度や加熱時間、ベーキングパウダーなどの材料の配合次第で、ケーキが膨らんだり、膨らまなかったりする。それら複数の条件を幾通りも組み合わせ、1年以上も試作を繰り返した結果、ようやく満足のいくケーキが出来上がった。

ところで、わざわざ紙カップを使ったのには訳がある。汚れたままの手でも、紙カップをつかんで食べれば衛生上問題ないからだ。被災した時の状況をしっかり想定した設計なのだ。

味はメープル風味、チョコ風味、フルーツMIXの3種類。メープル風味はメープルシロップの甘い香りが素晴らしく、それでいて甘さはクドくない。チョコ風味はラム酒が入っているので、開けた瞬間にラム酒の上品な香りが広がる。フルーツMIXは細かくカットした5種のドライフルーツ(パイナップル、パパイア、マンゴー、ココナツ、メロン)が入っており、そのこりこりした食感とふわふわケーキとの対比がいい。

「どこでもスイーツ缶」には、カップケーキのほかにチーズケーキ、抹茶チーズケーキ、ガトーショコラがある。カップケーキと同様、密封した缶内で、生の生地から焼いて造られている。

チーズケーキはオーストラリア産のクリームチーズを使っており、中心部がややレア風味で、周辺部分は香ばしいきつね色。缶内で焼いたからこそできる芸当だ。抹茶チーズケーキは、鮮やかな色と甘みを持つ西尾抹茶を使っている。ガトーショコラはチョコレートの風味が強く、こっくりした舌触りで濃密そのもの。どれも、普段から食べたくなるクオリティーであります。

世界のスイーツも缶詰になっている。今年日本で発売された、ドイツのサクランボケーキ「キルシュクーヘン」がそう。直径約10センチ、高さ約6.5センチとサイズは大きいが、重量は180グラムと軽量。プラスチックのフタが付属しており、その下には粉砂糖が付いている。

キルシュクーヘンは、ドイツ南西部のバーデン=ビュルテンベルク州の名物だそうな。ココア風味のスポンジケーキに、サクランボの蒸留酒が利かせてあり、サクランボのコンポート(砂糖煮)も入っている。

「キルシュクーヘン」のフタを開けると、大きなケーキがどんと収まっている。なかなか壮観な眺めであります。見た目はふわふわしているけど、食感はしっとり。ココア風味で、甘さはかなり控えめ。付属の粉砂糖をたっぷり振りかけるとちょうどいいくらいだ。合間に顔を出すサクランボのコンポートがほんのり甘酸っぱくて、いいアクセントになっている。

サイズは大きいが軽量なので、キャンプや登山などのアウトドアに持っていくのにもいい。野外で本格ケーキが食べられるなんて、うれしいじゃありませんか。

本格スイーツ缶には和テイストの商品もある。黒潮町缶詰製作所(高知県黒潮町)の「黒糖の濃厚和ショコラ」と、「栗と黒糖やわらか寄せ」だ。

「黒糖の濃厚和ショコラ」はみずみずしく、一見するとようかんのよう。しかし口に含むと甘いココアの味が広がるし、そのあとでこしあんの風味が顔を出すという、驚きが連続する和洋折衷味。こんな商品を考え出すなんて、同社の開発部にはすごい人がいるんですなァ。

「栗と黒糖やわらか寄せ」は、黒糖が香る水ようかんの中に栗の甘露煮が入っている。黒糖の濃厚和ショコラと違って、完全な和のスイーツだ。濃い緑茶が欲しくなる。

黒潮町缶詰製作所の缶詰は、この和スイーツ缶を含めてすべてが7大アレルゲン(エビ・カニ・小麦・ソバ・卵・乳・落花生)不使用で造られている。なぜなら、どの缶詰も防災備蓄食として使えるように開発されているから。

アレルギー体質の人は、避難所に届いた食料をそのまま食べるわけにはいかない。アレルギー物質が含まれていれば症状が出るからだ。過去の災害時にも、避難所で食物アレルギーが怖くて白ご飯しか食べられなかったり、アレルギー物質が入っていないものに代えて欲しいと依頼したら「わがままだ」と言われた例があったりしたという。であれば、最初からアレルギー物質を含まない商品を造ればいいというのが、黒潮町缶詰製作所の考え方なのだ。

今回紹介したスイーツ缶は、どれも普段から食べたくなるほどクオリティーが高い。ということは、自分の気に入ったものをまとめ買いし、食べたい時に食べ、ある程度減ったらまた買い足せば、いざという時に備えた「ローリングストック(日常備蓄)」になる。みなさんもぜひ、お気に入りの一缶を見つけてください。

(缶詰博士 黒川勇人)

黒川勇人
1966年福島市生まれ。東洋大学文学部卒。卒業後は証券会社、出版社などを経験。2004年、幼い頃から好きだった缶詰の魅力を〈缶詰ブログ〉で発信開始。以来、缶詰界の第一人者として日本はもちろん世界50カ国の缶詰もリサーチ。公益社団法人・日本缶詰びん詰レトルト食品協会公認。

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