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新型コロナウイルスのワクチン開発で欧米や中国に大きく後れをとり、日本の科学技術力の後退を懸念する声も聞こえる。だが、この状況を変えるかもしれないヒントが示されているのが、『ミドリムシ博士の超・起業思考』(日経BP)だ。著者は、東証1部上場のバイオベンチャー、ユーグレナの創業メンバーの一人、鈴木健吾氏。同社の技術のキモとなるユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養を実現させた人物だ。鈴木氏のキャリアを追いながら本書の読みどころを紹介する。

大学3年で出合ったミドリムシを一生のテーマに

ユーグレナ執行役員(研究開発担当)の鈴木健吾氏

ユーグレナ執行役員(研究開発担当)の鈴木健吾氏

鈴木氏は、東京大学農学部の3年生だったとき、研究室でひっそり培養されていたユーグレナに出合った。体長わずか0.05ミリ。池や田んぼで採取できる藻類で、植物と動物の両方の特性を持ち、和名をミドリムシ、学名をユーグレナという。

1990年代には、ユーグレナを食料問題と地球温暖化問題の解決に役立てようという壮大な計画があったが、その後、下火になっていた。食料問題などに活用するレベルで大量に培養することが難しかったからだ。

鈴木氏は、ユーグレナを一生の研究テーマに選ぶとともに、それを「社会に実装」することを目標に掲げる。つまり、大学で研究を続けるだけでなく、食料問題や温暖化問題の解決にも自らの手で取り組む、というわけだ。

ユーグレナは植物と動物の両方の特性を持つので、含まれる栄養素が59種類と格段に多い。これを利用すれば、栄養バランスの優れた食品が開発でき、必要な栄養素が不足した食事しかとれない途上国の問題解決にも役立つ。そのうえ、地球温暖化の原因の1つである空気中の二酸化炭素を吸収し、酸素を生成することができ、またユーグレナから絞った油分を利用したバイオ燃料を開発すれば、石油などの化石燃料を代替することができる可能性がある。

これらの「応用」は、いずれも従来とはケタ違いのレベルでユーグレナを大量に培養してこそ可能になる。そこで鈴木氏がとったアプローチが、「起業」だった。

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