もちろん、アカデミックの世界にも、その良さがある。大学ならではの研究インフラ(先輩研究者のネットワークや設備など)は、産学連携や共同研究を進めるうえでも欠かせない。そのため、論文を書くなどアカデミズムの“作法”も重要だと鈴木氏は言う。「博士号をとることや、学術論文を書くことは、会社の看板づくりでもあると捉えている。その看板があることで国の助成金を受けやすくなったり、大学の先生たちとの協働がしやすくなったり、会社の信用アップにつながったりする」(同書)

「研究の成果を社会に実装する」という発想

アカデミックな世界での研究とベンチャーでの活動という「二足のわらじ」を続ける鈴木氏がブレないのは、「研究の成果を社会に実装する」という目的が貫かれているからだ。

その著書『ミドリムシ博士の超・起業思考』でユニークなのは、ビジネスの世界で得られた知見が、研究開発で実際に応用されているところだ。例えば、「ロジカルシンキング」がユーグレナの大量培養の成功に寄与している。このように、単に二足のわらじを履くだけでなく、両者を結び付けて価値を生み出すという、ハイブリッドなところがある。

ところで、短期間のうちに開発された新型コロナの「mRNA」ワクチンでは、バイオテクノロジーのベンチャーの活躍が目立っている。例えば米モデルナ(Moderna)の共同創業者の1人は、ハーバード大学で研究を行っていたデリック・ロッシ氏だ。

日本では、ワクチン開発の出遅れから、「国際的な競争力の低下」を指摘する声もある。もう一度、科学技術立国を目指すなら、産学連携や大学発ベンチャーの振興はもちろん、研究の成果を素早く社会に還元する、鈴木氏のような研究者自身による「ハイブリッドな思考」も重要ではないだろうか。

(日経Gooday 竹内靖朗)

ミドリムシ博士の超・起業思考 ユーグレナ最強の研究者が語る世界の変え方

著者 : 鈴木健吾
出版 : 日経BP
価格 : 1,650 円(税込み)

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