わずか数カ月で屋外大量培養を実現

2005年、東大の大学院修士課程に在学中だった鈴木氏は、同じく東大農学部出身の出雲充氏らと3人でユーグレナをそのまま社名として起業する。そして、沖縄・石垣島の培養プールで実験を始めてからわずか数カ月で、ユーグレナの食用屋外大量培養を、世界で初めて実現する。

その後、ユーグレナを利用した健康食品やバイオ燃料の開発を実現し、会社も東証1部上場企業へと成長していく。一方で、鈴木氏はアカデミックな世界にも身を置き、農学と医学の博士号を取得し、現在は理化学研究所の微細藻類生産制御技術研究チームのリーダーのほか、マレーシア工科大学の客員教授、東北大学の特任教授(客員)も務める。

鈴木氏は、研究者が大学に残って研究を続けるか、民間企業に就職するかで悩むことは多いものの、「結論から言えば、わざわざ二者択一にせず、両者のいいとこ取りをするのが最も賢明な選択だと思う」とその著書『ミドリムシ博士の超・起業思考』で述べている。

いいとこ取りするメリットの一つは、「予算面」だ。大学の理系研究者なら、分野にもよるが、20代だと年間に利用できるのは数百万円程度。実験装置を1つ買えば終わりだ。しかも、「次の予算を確保するためには、それが大して世の中のためにならないとうすうす感じていたとしても、限られた予算の中できっちりと論文をまとめて、世の中に認めてもらう必要がある」(同書)。

起業すれば、民間企業として自助努力で研究予算を創出できる。営業利益を研究開発に回したり、出資を受けたり、新規株式公開(IPO)をしたりと、自由度が格段に高くなる。例えば、健康食品で稼いだ利益で、バイオ燃料の開発に使うこともできる。なお、現在、41歳の鈴木氏は、ユーグレナ社の研究開発担当の執行役員として、「グループ会社も含めると億単位の研究開発費を扱っている」(同書)という。

「ユーグレナバイオディーゼル燃料」を使用する西武バスの車両
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「研究の成果を社会に実装する」という発想
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