花粉症による鼻づまりは鼻洗浄が改善への一歩
花粉症で鼻づまりに悩んでいる人や「かくれ鼻づまり」の可能性がある人に黄川田さんが最初に薦める対処法は「鼻洗浄」だ。「鼻を洗うなんて、ツンとして痛いのでは?」という心配は無用。人間の体液と同じ浸透圧の生理食塩水で洗えば、ツンとすることはない。
なぜ、鼻洗浄が有効なのか。「空気中の花粉やほこり、細菌などの粒子のほとんどは、まず鼻の入り口から3分の1くらいのところで捕捉されます。ですからそこを生理食塩水で洗い流せば花粉やほこりを積極的に取り除くことができ、これらを原因とするくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状を軽減させられます」。黄川田さんによれば、欧米では鼻洗浄について鼻や副鼻腔の粘膜の炎症に対して生理食塩水を用いた洗浄が有効であるとの論文が10年ほど前から報告されているという。
鼻洗浄については一般にさまざまな方法が紹介されているが、目的は「鼻の入り口から3分の1程度のところ」を洗い流すこと。「洗浄水をのどに回したり、反対側の鼻に届くほど奥に送り込んだりする必要はなく、入れた側の穴から洗浄した水が流れ出る程度で十分です」。
準備 : 市販の鼻洗浄液を用意するか、体温に近いぬるま湯200mlに小さじ1/2弱の食塩を溶かし、専用の容器に入れる。


鼻洗浄だけで症状が抑えられない場合は、ステロイド点鼻薬を使用する。「ステロイド点鼻薬は、鼻づまりが原因で起こる睡眠障害の症状である日中の眠気に対して、効果も確認されています」。
症状が重い場合は手術治療という選択肢も
「鼻づまりで苦痛を感じる」「夜間の鼻づまりが原因で睡眠の質が落ちている」といったケースで、鼻洗浄とステロイド点鼻薬では症状が改善しない場合、手術治療という選択肢もある。一般に広く行われているのは、レーザーや高周波などで鼻腔粘膜に熱を加えて凝固させる手術で、外来でも簡単に受けられる。「ただし手術の効果は限定的です。花粉症では、効果は長くて数年程度でしょう」。
より高い効果を望む場合は、鼻腔粘膜の神経を切断することで粘膜を腫れにくくする「後鼻神経切断術」という方法もある。「なかでも、鼻の内側から粘膜を1cmほど切開して0.2~0.5mm程度の神経だけを切断する超微細手術なら、出血が少なく身体への負担も抑えられます」。
(取材・文・商品写真 千葉はるか/イラスト・グラフ 千葉さやか)
[日経ヘルス2021年4月号記事を再構成]※情報は掲載時点のものです
