yamaは、顔出しをしておらず、年齢、性別、出身地といった情報も非公開。そこにはちゃんとした理由があるという。

“一発撮り”をテーマにしたYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で2020年12月に『春を告げる』を公開。初となるメディア出演に多くの注目が集まり、わずか2日で250万回再生を記録、4月現在で1500万再生を突破する。オリジナルのアレンジが加わった本映像でしか体感できない動画となっている

「自分は余計な情報をできるだけそぎ落としたいタイプなんです。パーソナルな部分と作品を明確に分けたほうが、より音楽に集中できて、世界観に没頭してもらえるかなと思っていて。なので、SNSでも日常的なつぶやきなどはしないですね。

あと、『春を告げる』のMVは、以前から好きだったイラストレーターのともわかさんにお願いして書いてもらった、一枚絵にしているんです。当時は、実写やアニメのMVを作る予算がないということもありましたが、一枚絵だからこそ、曲に集中できるんじゃないかという思いもありました」

共同作業の楽しさを知った

そんなyamaはどのように楽曲制作を行っているのか。『春を告げる』の作詞作曲を務めたくじら、デビュー後の楽曲を手掛けるTOOBOEへの信頼は厚いようだ。また、エンジニアの釆原史明も、レコーディングには欠かせない存在だという。

「『春を告げる』は初のオリジナル曲で、カバーを2年ほどやり続けるなかで、一歩先に進みたいという思いがあったんです。そこで『ねむるまち』でつながることができた、くじらさんに制作をお願いしました。くじらさんが作る楽曲はもともと大好きだったので、あえて何もリクエストは出さず、『くじらさんの思うように書いて下さい』と。2曲が上がってきたんですが、『春を告げる』はタイトルも歌詞にも、“開幕戦”っぽさがあったので、新しいスタートにふさわしいと思って選びました。

『麻痺』 2月にリリースした、5曲入りの初のCDシングル。デビュー曲から手掛けるTOOBOEが全曲の作詞作曲を担当。表題曲をはじめ、ブラックミュージックのテイストがふんだんに入ったサウンドが印象的(ソニー/1000円)

TOOBOEさんにも全幅の信頼を置いているので、基本お任せしています。彼の曲は、次の展開が予想しづらく、レコーディングで歌う時はいつも苦戦していて(笑)。時には、同じパートを1時間以上歌い続けることもあります。ただそんな時は、エンジニアの釆原さんのボーカルディレクションも取り入れて、ブラッシュアップするようにしています。

釆原さんのアドバイスは、歌声に含まれる息の量や、滑舌など、自分にはない視点のものも多くて。新曲の『麻痺』は、葛藤を抱えながらも前を向いて走っていこうという内容なんですけど、『疾走感を表現するため、パキッとした勢いのある声にしよう』など、細かくディレクションしてくれる。1人で歌うほうが楽だとずっと思ってきたんですけど、信頼関係が築けている人との共同作業はいいなと感じています」

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(ライター 阿部裕華)

[日経エンタテインメント! 2021年4月号の記事を再構成]

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