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頼れるリーダーはしゃべりにも指導力が期待される(写真はイメージ) =PIXTA

頼れるリーダーはしゃべりにも指導力が期待される(写真はイメージ) =PIXTA

しゃべりのテクニックを磨くうえで、テレビのニュースは役に立つ。日ごろはニュースの中身を意識して見ることが多いが、登場する人物の語り口にフォーカスすれば、自分のトークをレベルアップさせるヒントがもらえる。今回は4月のニュース番組からピックアップした政治家たちの発言を比較して、「主語」の立て方を考察してみる。

4月は政治リーダーの声をたくさん聞いた。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、まん延防止等重点措置が東京都や大阪府に適用され、緊急事態宣言も再び出される状況となったことから、政府と地方自治体のトップが発言する機会が増えたからだ。聞く機会が増えたおかげで、それぞれの違いも見えてきた。今回のテーマに選んだ「主語」の立て方に着目すると、それぞれの語り口から、聞き手との向き合い方も感じ取れる。

テーマが政治分野であっても、ビジネストークの学びに役立つ。経済人に比べて、一般のニュース番組でも映像を目にする機会が多いから、参考にしやすい。見る際のポイントは「イラッ」とする感覚だ。自分が聞いていて、何だか引っかかる瞬間が「気づき」を得るチャンス。「なぜ、私はこのしゃべり方に不快感やを覚えたのか」を考えてみれば、自分の話術を磨くきっかけを得られる。反復チェックしやすいという理由から、ニュースは録画をおすすめしたい。

たとえば、主語の扱いは発言者ごとにかなり違いがある。大別すれば、「私は」と明示する人と、あまり自分を出さない人の2種類に分かれるだろう。もともと日本語では主語をはっきり言わないケースが多い。むしろ、上手な文章を書くには、主語が少なめのほうが好ましいともいわれる。

だが、危機に立ち向かうリーダーが選ぶ日本語は異なるだろう。発語者をはっきり示したうえで、具体的な方針や政策を打ち出す態度が期待される。そうしたリーダーらしさを誰が発揮したのか。4月の発言を、新型コロナウイルス対策に絞って、比較してみよう。

重点措置を要請する検討の開始を、東京都の小池百合子知事が表明したのを受けて、菅義偉首相も記者会見を開いた。その際の発言はこうだ。

「現時点において、ま、要請を受けておりません。新規感染者数、さらに病床の状況、こうしたものを勘案をして、自治体と専門家の、ま、意見をうかがいながら決定をしていきたい」

主語がない。述語の「要請を受けておりません」「決定をしていきたい」からみて、政府が主語だろうと思われる。政府の代表として発言しているので、首相個人と政府が混然一体になっているようだ。そのせいもあってか、リーダーシップを感じ取りにくい。

実際に都が重点措置を要請した日の首相発言も、何だか頼りなさげだ。

「東京の要請を受けて、明日、専門家会議にはかる。ま、そういうことであります」

この「はかる」も政府と首相の「ミックス主語」とみえる。首相が「私は」と主語を明示するのはあまり多くない気がする。どちらかといえば、政府を前面に押し立てたがっているような印象さえ受ける。

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