年金を受け取るのは、まだまだ先の話。そう考える人も多いかもしれません。しかし、年金は退職後の確実な収入です。退職までにどう年金をつくるのかなど、ライフプランを立てる際にも大きく関わってくるでしょう。
年金制度は、社会の状況などにあわせて、改定が行われています。今回は、ぜひとも知っておきたい3つの改定を紹介します。あわせて、その対策も考えてみましょう。

年金額は平均賃金の下落も反映
はじめに、2021年4月に行われた「年金額改定」での新ルールを解説します。
国民年金や厚生年金の公的年金は、物価や賃金の変動にあわせて、毎年度、年金額が変わることをご存じでしょうか。
たとえば、物価が上昇した場合、年金額もあわせて改定され、年金で買えるモノやサービスが極端に少なくなることはありません。これは年金の大きなメリットの一つといえるでしょう。
物価変動率は前年の「全国消費者物価指数」を、賃金変動率は経済変動の影響を平準化するため、2~4年度前の賃金変動率の平均を使います。
この物価や賃金にあわせて年金額を改定するルールが、21年4月に変更されました。
21年4月より前は、物価の変動が0%以上で賃金が下落した場合、年金額は据え置くことになっていました。しかし、21年4月の改正で、賃金が物価以上に下落した場合、年金の改定率を賃金に合わせる新ルールが適用されました。
年金は、現役世代の支払う保険料で受給者に支給する「賦課方式」をとっています。保険料は、その時々の賃金によって上下するため、賃金が下落している状態で支給額を維持すると、年金財政の悪化につながるという懸念がありました。
ちなみに、21年度の物価変動率は0%で、賃金変動率がマイナス0.1%でした。従来であれば年金額は据え置きのところ、新ルールが適用されて0.1%減額の改定となっています。
20年度の新型コロナウイルス禍による賃金減は、22~24年度に反映されるということなので、来年度以降に年金減額という影響がありそうです。
年金額の上昇率も抑えられる
上記の改定を「本来の改定」といいます。実は、年金額の改定はこれだけではありません。「本来の改定」に加えて、「マクロ経済スライド」という制度が発動される場合があります。
マクロ経済スライドは、賃金や物価が大きく上がった場合、年金額の上昇率をそれより抑えることで給付を減らす仕組みです。
賃金・物価が下落した場合は、マクロ経済スライドは発動されません。物価や賃金の上昇率が小さい場合は、年金額がマイナスにならない範囲でマクロ経済スライドを一部だけ発動します。未調整分は次年度以降に繰り越す「キャリーオーバー」という仕組みがあります(※)。今後、物価や賃金が上昇しても、受け取れる年金額はある程度抑制される可能性が高いでしょう。
(※)キャリーオーバー制度は、18年度から適用されたため、それ以前の未調整分の繰り越しはありません。
ちなみに、5年に1度行われる「財政検証」で、年金財政の均衡を図ることができると見込まれる(マクロ経済スライドによる調整がなくても収支のバランスが取れる)場合には、マクロ経済スライドによる調整は終了することになっています。