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赤楚衛二 転機はたくさん、たぶん全部つながっている

赤楚衛二インタビュー(下)

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NIKKEI STYLE

日経エンタテインメント!

2020年10月期に放送された連ドラ『チェリまほ』が海外でも反響を呼ぶヒット作となり、若手主演俳優の1人として急激に注目度が増した赤楚衛二。前回の「赤楚衛二 『チェリまほ』は本当に宝物になりました」に引き続き、今回は俳優人生のこれまでについて振り返ってもらった。

俳優活動をスタートして、最初の現場は映画『ヒロイン失格』(15年)。その後に訪れた大きなチャンスは、『仮面ライダービルド』(17年)。このときに、撮影にまつわる基礎が学べたという。

「すごく勉強になりました。それまでは現場でも分からないことが多かったので、心もとない不安みたいなものが大きかったんですけど、1年間同じ作品に携わることによって、カメラワークとか、いろいろな部署の人たちの役割を全部認識できるようになって。こういうカット割りをするとこんなふうに見えるんだ、みたいなところから知ることができました。

アクションに取り組んだことで、体の使い方を学べたのも財産です。現場のことがよく見えるようになって、『このスタッフさんはこういうことをやってくれていたんだな』って思えるようになったのは、『ライダー』からです。

キャリアでいうと、転機になった作品はたくさんあります。選べないくらいに。舞台『黒子のバスケ』(16年)から始まり、演出家の中屋敷法仁さんとのご縁もあって、同じ年に『露出狂』に出させてもらえて。(役者が)23歳以下限定の舞台だったんですが、初めてメインになるなかで、自分が最年長でまとめなきゃいけないポジション。いろいろと悩んだ時期でしたね。

でも、配信ドラマの『仮面ライダーアマゾンズ シーズン2』(17年)のときに、その苦悩を生かせたと思いますし、その後に日曜朝の『仮面ライダービルド』という流れなので、たぶん全部つながってるんですよね。

他には、連ドラ『わたし旦那をシェアしてた』(19年)を見てくださった方も多いですし、もちろん、連ドラ『ねぇ先生、知らないの?』(19年)や映画『思い、思われ、ふり、ふられ』(20年)も。どれか1つというよりは、全部巡り合わせ、ご縁だったのかな、と思います」

事務所の先輩の影響は受けていそう

『ねぇ、先生』『ふり、ふら』『チェリまほ』は主演作となる。増えつつある"主演"の立場についてはどんな思いが。

「めちゃくちゃ楽しいですし、うれしいです。『主演やりたいな』って思います。というのも、物語の主軸にはなるので、台本に書かれているヒントが多いんですよね」

小栗旬、綾野剛、田中圭らを擁するトライストーン・エンタテイメントの山本又一朗社長に誘われ、この道に入った。

「サマンサタバサのモデルオーディションを受けたことがきっかけで、社長が『ウチに来い!』って。僕は『クローズZERO』(07年、09年)世代で、小栗さんも大好きでしたし、田中さん、綾野さんもカッコいいなと思っていました。あとは社長の器の大きさみたいなところで、ついていこうと決めた覚えがあります。

事務所の仲間の話で言うと、上のお三方とはちょっとご挨拶した程度で、『あー緊張した』ってなっちゃう感じですね。接点があるのは、昨年の活動自粛期間に1度リモート飲みをした高橋努さんや、よくお世話になっているのは笠原秀幸さん。坂口健太郎さんも良くしていただいてます。

コロナ以前は忘年会などで、先輩にお会いできる機会はあったんです。お話を聞くなかで、立ち居振る舞いもそうですし、役者としての向き合い方や、ストイックさを身近に感じられて、得られるヒントは盗みたいと思ってましたね。少なからず、影響は受けているかなって。……頑張ります(笑)」

2月に連ドラ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日本テレビ系)や『監察医 朝顔』(フジテレビ系)にゲスト出演した際も話題になるなど、各方面に引っ張りだこの状態が続いている。3月22日には、若手刑事役で出演したテレビ東京の単発ドラマ『ハクタカ~白鷹雨音の捜査ファイル~』が放送。夏には出演映画『妖怪大戦争 ガーディアンズ』が公開になる。

心に残る眞島秀和さんの言葉

「『チェリまほ』以降、応援してくださる人が確実に増えたとは思っています。根本は僕、人を楽しませたいっていう部分が大きいので、自分がゲスト出演に呼んでいただけたら、その物語の面白さを、役を通して精一杯伝えたいと思っています。

真木よう子さん主演の『ハクタカ』は、今年の1月を丸々使って撮り終えました。新人刑事で、いろんなものを吸収していく役どころでもあったので、先輩たちの胸を借りながらお芝居して。刺激を受けたのは、眞島秀和さん。『役者をやりながらバイト生活もしてて、やっと食べていけるようになりました』みたいな話をしたら、眞島さんご自身もすごく苦労した時期があったけど、今は楽しいっていう話をしてくださって。『今の俺から言えることは、とにかく役者を続けていくことが大事だよ』って」

「10年後、20年後にどんな人生が待っているのか、不安があるなかで、絶望せずに前を向いて、ちゃんと人生と向き合う大切さを感じ、自分もこういう年齢の重ね方をしたいと思いました。そんないい話をしてくれた後に、『じゃあさっそく若い芽、摘んでおくか』って、急にSっ気を出すお茶目なところもあって(笑)。素敵な方でしたね。

『妖怪大戦争』は特殊メイクがすごくて、写真を見たら分かりますが、もう『誰これ?』という感じではあるんですけど(笑)。三池崇史監督と、主演の寺田心君をはじめ、周りのキャストの方たちの中で作り上げていった天邪鬼というキャラクターです。アイデアをバンバン出し合う活気ある現場でしたし、楽しみにしてほしいです」

代表作が生まれ、今後、オファーが増加することは間違いないだろう。どんな作品をやりたいと思っているのか。もしくは、選択するにあたり判断基準はあるのか。

「判断基準……。そこもそうですが、役者って自分と向き合い続けることになるので、自分がどう生きたいか、どうしたいかの気持ちも大事にしたいと思っています。20代のうちは、なるべくいろんなものに触れたくて。ぶっちゃけて言うと、ジャンルは何でもいいです。僕に合う、合わないっていうことで決めたくないですし、あらゆることにチャレンジして、もがいていきたい。

そういう意味では、『チェリまほ』は挑戦にはなりました。なかなかない役なので。とは言いつつ、僕自身の中に安達みたいな要素は存在していて。だから全く理解できないわけではなく、不安がありながらも、共感できるものがたくさんありました。

最初から役者の道に興味があったわけではなかったんですが、作品を見た方に『明日から頑張れそうです』とか、『元気をもらいました』とか言っていただけるたびに、希望を与えられる仕事なんだってうれしくなります。これからも恐れずに、いろんな役を経験したいですね。その積み重ねで、自分のブレない軸だったり、役者としての個を深めていけたら、30代くらいからは『この役を生きたい』っていうのを自分の意思で選択していきたいと思っています」

(ライター 内藤悦子)

[日経エンタテインメント! 2021年4月号の記事を再構成]

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