日経エンタテインメント!

心の声が聞こえるという設定上、『チェリまほ』はナレーションで展開するシーンも多かった。戸惑いはなかったか。

(写真:橋本勝美)

「そうですね、声の演技は割と苦労しました。後半のほうは、アフレコスタジオでやらせていただいたんですが、最初のほうは、現場で布みたいなものを3人掛かりで僕に被せて、その中で椅子に座って、音声さんがマイクを向けてるなかで、物音を立てないようにしてしゃべるっていう。めちゃくちゃ難しかったです。

やっぱり映像を見たほうが、空気感が分かるし、『こうやりたい』ってイメージができるので。音声を聞き直すこともできなかったから、少し迷いが生じたり。でも『監督がOKを出してくれたんだから大丈夫だ』って信じて。お芝居をしてるときはみなさん、表情や目線1つで多くのことを物語ってくれているんだなって、改めて感じました。

声つながりだと、心の声が聞こえるタイミングを表現するのも難しかったです。自分が向いていない方向で肘が触れて、みたいなときのセリフのテンポや間は、つかむのにちょっと苦労しました。8話でうっかり黒沢の韻を踏んだ心のポエムを聞いてしまうシーンでは、フツフツと笑いが起きないといけなくて、そこのタイミングも気を抜けませんでした。

放送中は、びっくりするぐらいSNSのフォロワーやコメントが増えて。実感とまではいかないけど、広がっていってる感覚はあったんです。いつも連絡をくれない人が『面白かったよ』ってメールをくれたり、海外の人からもコメントが届いたり。見てくれている人がこんなにいるんだって、本当にうれしかったです。こうやって振り返ると、『チェリまほ』は今の自分を肯定してくれる大切な存在になったなと感じます。言葉で表すのは難しいですけど、これまでやってきたことは間違っていなかったんだって思わせてくれる作品になりました」

インタビュー(下)では、デビューからこれまでの俳優人生について振り返ってもらう。

(ライター 内藤悦子)

[日経エンタテインメント! 2021年4月号の記事を再構成]