わかりにくい給与額 みなし残業と標準賞与のカラクリ20代から考える出世戦略(108)

写真はイメージ=PIXTA
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会社を選ぶとき、給与の見方がわからない、という声を聞くことがあります。筆者の人事コンサルタントとしての30年近い経験をもとに、就職・転職を目指すあなたにとって有利な給与制度の見極め方をお教えしましょう。それは経営者向けには、給与制度をどう変えればよいかというヒントにもなるはずです。

どの会社の条件がよいのかわかりづらい

「求人票に示されている給与の意味がよくわからないんです」

弊社で働くインターンからそんな声を聞くことがあります。

前回の記事「大企業か中小か キャリアのスタートはどちらがよい?」でも書きましたが、弊社では、在籍しているインターンに対して他社での内定獲得を積極的に支援しています。

そんな中で、求人票の見方、特に給与額のところがよくわからないという言葉を聞きました。

たとえば皆さんは次の3社のうち、どの会社の給与条件が良いと思いますか? これはとある業界での実際の求人票に記載してあった内容です。金額は少しだけ変えています。

A社:年収490万2000円(月給 : 29万6000円 × 12ヶ月 + 標準賞与額:135万0000円)
B社:年収476万4000円(みなし残業時間として月30時間。標準賞与120万円)
C社:年俸440万円(固定残業代なし)

この3社のうち、給与条件が最も良いのはC社です。A社とB社については詳細がわからないと判断が難しいのですが、背景にある人事制度を推測してみて年収で比較するとB社のほうが良い条件だと思われます。つまり求人票の年収はA社>B社>C社なんですが、お勧めはそれとは逆のC社>B社>A社ということです。

なぜこのような判断をするのか。

そこには残業代と賞与の秘密が隠されています。

みなし残業という遺物

この例では、B社の条件に「みなし残業時間として月30時間」という記載があります。みなし残業時間とは、残業時間に関わらず一定の残業代を支払いますよ、という仕組みです。10年ほど前まではみなし残業時間は、サービス残業のための仕組みでした。上記の名目で、実際の残業が40時間でも50時間でも、すでに30時間分払っているんだからそれを超える分はあなたの生産性が悪いからだ、という指摘にも使われたりしました。

しかし今、みなし残業時間の使われ方は変わっています。なぜなら残業時間に対する規制が厳しくなり、みなし残業時間を超えた残業をした場合には追加で残業代を支払うことが徹底されているからです。

けれどもこの例のようにみなし残業時間が記載されている求人票は多数あります。その理由は、見た目の手取り額を増やすためです。

実はこの条件に基づきB社の月給を計算すると29万7000円になります。年収476万4000円から標準賞与120万円を差し引き、それらを12等分するとその金額になります。ただしその内訳としては、基本給24万円、30時間分のみなし残業手当5万7000円となるのです。

仮にB社の人事制度において、5万7000円×12カ月分のみなし残業手当が払われず、残業した分を全部払いますよ、という仕組みだとすれば、求人票に示される年収は次のようになります。

B社:年収408万円(固定残業代なし。月給24万円 標準賞与120万円)

こうしてみるとそもそも固定残業代なし、としているC社>B社であることがわかります。

けれどもA社はまだ圧倒的に年収が高く見えます。

だからA社>C社>B社、の順なのでしょうか。

いえ、A社の実質年収はB社よりも少ない可能性があります。

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逆算で推測する実際の年収
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