執筆とは取材の翻訳
このようにライター像を提示したあと、「取材」「執筆」「推敲(すいこう)」の3部構成でライターの仕事を論じる。取材に割り当てられた1~3章100ページ強は、まず《第1章 すべては「読む」からはじまる》で幕をあける。なにかを「知ろうとすること」すべては取材なのだ。「対象を『知る』ところから出発して、『わかる』にたどり着くまでの、知的冒険」。これが古賀氏にとっての取材だ。
全体の半分近い230ページ強が充てられた第2部「執筆」は「書くということ」「コンテンツをつくるということ」はどういうことかをひたすら考えていく。「執筆とは取材の翻訳」というところから構成、原稿のスタイル、そして文章表現レベルまでを丁寧にひもといていく。そして第3部では、いったん「書き終えた」原稿を「書き上げる」推敲という最後の自分との戦いに焦点を当てる。
「昨秋からよく売れた『独学大全』も分厚かったが、この本も分厚くて3300円と高い。それでも3週連続で1位。本格的な本が求められている気がする」と同書店でビジネス書を担当する本田翔也さんは話す。本書の編集者として伴走したのは、『嫌われる勇気』『ゼロ』でもタッグを組んだ編集者の柿内芳文氏。同書店は、この著者と編集者の2人がつくった本を並べた特設のコーナーを版元の企画で設置、2人を呼んでの書店イベントも予定しており、息の長い売れ筋に育てる仕掛けを整える。
広告系の本が上位に並ぶ
それでは先週のベスト5を見ていこう。
(1)取材・執筆・推敲 | 古賀史健著(ダイヤモンド社) |
(2)ステートメント宣言。 | 岡本欣也著(宣伝会議) |
(3)広告がなくなる日 | 牧野圭太著(クロスメディア・パブリッシング) |
(4)ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門 | 原野守弘著(クロスメディア・パブリッシング) |
(5)マイノリティデザイン | 沢田智洋著(ライツ社) |
(青山ブックセンター本店、2021年4月12~18日)
紹介したライターの教科書が1位だ。2位から5位までは、広告業界の制作系の仕事に携わる人が書いた本が並ぶ。2位の本は、コピーライターの仕事を改めてとらえ直した一冊。ステートメントとは企業が掲げる方針、約束、宣言のことで、これを題材に心に残るコピーやことばを考える。3位は「SNS/SDGs時代のブランド論」をうたう本。4位は、前回2月に同書店を訪れたとき「ビジネスに通ずる クリエイティブ発想の本質を明かす」の記事で紹介した本だ。5位には、福祉の世界で活躍するコピーライターが自身の仕事を語った本が入った。
(水柿武志)