人気女優になっても偉ぶらない、皆に慕われた姉御

小中学校の同級生でルリ子さんの旧自宅の真正面に住んでいたというのが梶山健一さんだ。「もともとお父さんも芸事が好きだったので、娘が女優になったことをとても喜んでいた。ルリ子さんは人気女優になっても全然偉ぶったところがない。リリーさんみたいにサバサバしていて、姉御として皆に慕われていたね。神田から日活のスタジオに近い東京・調布に大きな屋敷を建てて引っ越すんだけど、よくそこに居候させてもらったよ」と懐かしそうに話す。

新装オープンした「次郎長寿司」で接客する梶山健一さん。ルリ子さんの自伝(手前)は大切な宝物だという。

調布の自宅には石原裕次郎さん、小林旭さん、二谷英明さん、宍戸錠さん、高橋英樹さんら日活俳優が出入りし、合宿所のようなにぎわいだったそうだ。ボクサーの海老原博幸さんやカントリー&ウエスタン歌手で俳優の小坂一也さん、女優の大原麗子さんらも入り浸り、皆で楽しいひとときを過ごしたという。

ちなみに、加山雄三さんの「若大将シリーズ」のヒロイン役で活躍した東宝の看板女優、星由里子さん(2018年5月死去、享年74歳)も神田(鍛冶町)出身。加賀まりこさんも神田(神田小川町)出身。3人は大の仲良しだった。神田は大女優を輩出する土地でもあるようだ。

星由里子、加賀まりこ… 東京・神田は大女優の輩出地?

同級生の梶山健一さんが経営していたスナック「るり」と「次郎長寿司」(JR神田駅南口近く、現在は移転)

梶山さんはJR神田駅南口近くでスナック「るり」と「次郎長寿司」をずっと営んできた。「るり」の由来は、もちろん浅丘ルリ子さんの名前。ルリ子さんも「るり」や「次郎長寿司」に何度か顔を出したことがあるそうだ。だがどちらの店も再整備計画で立ち退きを余儀なくされ、今年2月下旬に閉店。数十メートルほど南のガード下に移転し、3月から新たな店構えで営業している。

「ルリ子さんの旧自宅も、その正面にあった自分の昔の家も、残念ながら解体され、駅のすぐ脇の店も移転を余儀なくされた。とても寂しいよね。でも目をつむると、昔の光景が鮮やかによみがえってくる。懐かしい思い出は心の中で輝いているよ」としんみり語る梶山さん。

新装オープンした「次郎長寿司」でお任せコースを握ってもらった。「おいらもまだまだ元気に仕事を続けるつもり。コロナ禍が少し落ち着いたら、またルリ子さんに店に遊びに来てほしいって伝えておいてよ」とニッコリ笑う。時代は変わっても、温かい人情は変わらない。梶山さんの握ったすしには、そんな下町の粋な心意気が込められている気がした。

(編集委員 小林明)

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