日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/5/10

これまでは、障害を持つ社員にリモートワークの選択肢を与える企業は少なく、障害者は職場から締め出されてしまうことが多かった。ところが、パンデミックによって会社全体がリモートワークに移行したことで、これまでもその気さえあればリモートでの仕事は十分可能だったことが証明された。

ただし、カーン氏は、パンデミックが終わったとき自分たちはどうなるのだろうかという不安を抱えている。「元の生活に戻った途端に、この働き方がまた消滅してしまうかもしれません。そう考えると、とても怖いです」

将来性と対策

コロナが落ち着いたとき、対面とリモートの両方を取り入れて仕事を進めることは可能だろうか。対面での会議を再開した後も、一部の人はビデオや電話での参加が認められるように、社内の雰囲気が変わっていくとよいだろう。

論文著者のフォービル氏は、ビデオ会議の際に体の自然な動きが束縛されないように、立って仕事ができるデスクを購入した。また、コンピューターの画面には目に優しいオレンジ色のフィルターを使っている。目にかかる負担は、ZEF基準でズーム疲れの要因の一つとされている。ただし、「ズーム疲れ対策の責任は、個人に任されるべきではありません。それでは、格差の広がりにつながるだけです」と、フォービル氏は強調する。

論文著者らは、企業が今回の論文を活用して、社員全員をズーム疲れから守るための方針を提案することを期待している。週に1日はビデオ会議のない日を設けたり、会議と会議の間に10分間の休憩をとるという規則を作ったり、何らかのツールを使ったりすることなどが挙げられる。ビデオ会議アプリには、自動字幕起こしや画面の共有機能があるほか、人と関わっていることを実感できるなど、優れた点も多いが、電話やメールで済ませられる場合も多い。

ビデオ会議アプリを開発する企業も、ズーム疲れを軽減させる様々な改善を加えることが可能だ。

「最も簡単な改善は、自分の顔を画面に大きく表示させないようにすることです」と、今回の論文の共著者でスタンフォード大学バーチャル・ヒューマン・インターアクション研究所の創立者ジェレミー・ベイレンソン氏は提案する。会議室に入ってから数分で自分の顔が消えるように初期設定できれば、鏡不安を予防できるという。

また、ユーザーと画面の向こうにいる人との感覚的な距離を計算して、会議参加者の画面の最大表示サイズを制限すれば、ハイパーゲイズ対策にもなる。

会社がどんな対応をとるかにもよるが、この先もリモートワーカーのズーム疲れはしばらく続くだろう。特に、女性や有色人種にかかる負担が大きい。しかしラタン氏は、人々がかつてないほどリモートワークに寛大になっていることも感じているという。

(文 THERESA MACHEMER、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年4月18日付]

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