日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/5/10

第2に、ビデオ会議中はウェブカメラの枠内に常に収まっていなければならないと感じ、自由に動けないことにストレスを覚える。

第3に、多くのビデオ会議アプリは、初期設定で自分の顔が表示される状態(セルフビュー)になっている。だが、そのまま自分の顔を見続けていると、「鏡不安(mirror anxiety)」に陥ることがある。自分を強く意識しすぎてストレスが溜まり、それによって注意散漫になったり、不安症やうつ病を引き起したりするという。

そして最後に、他の人々が自分のことをじっと見つめているのではないかという思いにとらわれてしまう「ハイパーゲイズ」という現象について、論文は解説している。会議の参加者は全員カメラに向かっているため、その視線がすべて自分に向けられていると思い込んでしまうというのだ。さらに悪いことに、1対1の会議になると相手の顔が画面いっぱいに表示されるため、その人がまるで自分のすぐ間近に立っているような錯覚を起こす。

性別・人種による違い

アンケートによると、女性のほうが男性よりもビデオ会議に割く時間が長く、合間の休憩時間は短いことがわかった。また、女性は男性よりも鏡不安に陥りやすく、ビデオ会議に縛り付けられていると感じることも多い。

「過去の研究でも、鏡不安になるのは男性よりも女性のほうが多いことが示されています。私たちがアンケートで性別を答えてもらったのもそのためです」と、フォービル氏は言う。しかし、なぜ女性のほうが会議に縛り付けられていると感じるのかはわかっていない。

また、白人よりも有色人種のほうがズーム疲れを感じていることも示されたが、人種による違いは性別による違いほど大きくはない。

オンライン会議がもたらしたもの

リモートワークの恩恵は多い。米ミシガン州立大学の准教授ラビンドラ・ラタン氏は、オンラインで研究や授業が行えるようになったことから、パンデミック中にカリフォルニア州へ引っ越した。また、ラタン氏もフォービル氏も、パンデミック中に、国外の研究者と気軽に協力できるようになったと感じている。

南カリフォルニアに住むシステムエンジニアのザーラ・カーン氏は、聴力と体力に障害を抱えているが、リモートでできる仕事を見つけたことで症状の管理が楽になったと話す。カーン氏は、自動で字幕を作成してくれる会議アプリを使って1日3~4時間のビデオ会議をこなす。

「体力や健康を管理したり、水分を補給するのさえ楽になり、はるかに働きやすくなりました。以前の仕事では、そうしたくてもできませんでしたから」

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