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おもちゃとは言わせない プラス「クルマ型鉛筆削り」

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日経クロストレンド

おもちゃのような車に鉛筆を差し込んで前後に走らせると、その鉛筆が削れる。プラス(東京・港)が2021年2月に発売した「ハシレ!エンピツケズリ!」はそんなユニークな車型の鉛筆削りだ。新車発表会のようなPR動画と特設サイトもネット上で話題になり、想定以上の好調な売り上げだという。その使い勝手を確かめた。

「クルマ」を前後に動かして鉛筆を削る

「ハシレ!エンピツケズリ!」の使い方は簡単だ。後ろの開いている穴に鉛筆を差し込み、レバーを動かして鉛筆を固定する。あとは手でつかんで前後に走らせると、その動きに合わせて内部にある小型の鉛筆削り器が回転し、鉛筆を削るという仕組み。前後どちらに動かしても鉛筆が削れるのがポイントだ。

実際に使ってみると、鉛筆を軽い力で素早く削れることに驚かされる。新品の鉛筆を削ってみたところ、前後に短く3往復ほど動かしただけで削り終えてしまった。一般的な手回し式の鉛筆削りだと、机に強く押さえつけてハンドルを何度も回さないといけないところだが、そうした面倒くささがない。

削るときの音は静かで、削り終えるとカチカチとウインカーを出したときのような音を鳴らして知らせてくれるのも親切だ。これなら小さな子供でも楽に鉛筆を削れるだろう。

削りかすはカバーを開けて捨てる。内部にはペンケースに入れておいて学校で使うような、小型の鉛筆削り器(替え刃)が入っている。その先には新開発のギアがあり、車を前後どちらに動かしても削り器が一定方向に回転するようになっている。このギアが製品構造の肝と言えそうだ。

小型の鉛筆削り器は、普通なら手に持って鉛筆のほうを回して削るもの。これを逆にして、削り器を回転させて削るのが面白い。ただ「ハシレ!エンピツケズリ!」内部にある小型の鉛筆削り器は、一般的な手回し式の鉛筆削りほどの耐久性はない。そのため、製品には交換用を含めて2個、小型の鉛筆削り器が付属する。

ボディーはABS樹脂製で、少々手荒に扱っても大丈夫そうな安心感がある。全体的になめらかな形でとがった部分がなく、幅も狭いので、子供の手でも握りやすそうだ。底面には、児童向け文具に必須の名前を書く欄がある。本体色はレッド、ブルー、イエローの3色のカラーバリエーションがある。

ユニークな動画で親にリーチ

「ハシレ!エンピツケズリ!」の実勢価格は2700円前後。手回し式の鉛筆削りは1500~2000円がボリュームゾーンでそれよりやや高価だが、プラスによると想定以上のペースで売れていて、増産をかけている状態だという。

開発のきっかけを、プラス ステーショナリーカンパニー 製品クリエイティブ本部の本木礼夫冴氏は「車を眺めているときに、このタイヤの回転を使って鉛筆を削れないかと考えた。子供の頃、一般的な手回し式の鉛筆削りはハンドルが回しにくく、苦手だった。車の形をした鉛筆削りなら、手でがっちりつかんで体全体で動かすことで、子供でも楽に楽しく削れると思った」と話す。

車型にするのなら、子供に人気がありそうなパトカーや消防車にしてもよさそうなものだが、シンプルなスポーツカーのようなデザインにした。この形にしたのは実用性を追求し、おもちゃだと思われたくなかったからだ。

「おもちゃだと思われるのは嫌だった。鉛筆削りとしての機能をおまけにしたくなかった。そのため過度なデザインはやめてシンプルな形にした。すでに市場にある何かをモチーフにするのではなく、子供が好きな『速さ』と『未来的』という2つのコンセプトに肉付けするデザインにした」(本木氏)

製品のターゲットは、幼稚園年長組から小学3年生ぐらいまでの男の子。そうした子供の祖父母や両親からの入学祝い需要などを狙っている。プロモーションについてはSNS(交流サイト)での拡散を意識した動画を作成し、実質的な購買層となる子供たちの両親への訴求を図った。新車発表会のような雰囲気で製品を紹介するユニークな動画で、再生回数は約1カ月で1万2000回を超えた。プラスの製品では非常に多い再生回数だという。

プラス ステーショナリーカンパニー コミュニケーション本部の野場由喜子課長は、「買う人と使う人が違う商品なので、買ってくれる人にリーチするためのプロモーションを考えた。動画自体が話題になり、車がフックになることを狙った」と語る。実際に、車好きの父親が購入して子供にプレゼントするといったケースも多いという。

プラスの文具はオフィス向けのものが中心だが、ペーパーレス化やコロナ禍によりオフィス向け文具の需要は減少傾向にある。そこで今後は児童向け文具の市場にも力を入れていきたい考えだ。「プラスらしいデザインと機能性を持つ児童向け文具としてポジションを作っていきたい」(野場氏)という。出だし好調の「ハシレ!エンピツケズリ!」は狙い通りの製品と言えそうだ。

(フリーライター 湯浅英夫、写真 スタジオキャスパー)

[日経クロストレンド 2021年4月16日の記事を再構成]

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